東和フードが変えたお好み焼き店の「常識」 新戦略によって客単価が3000円程度へ倍増

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「お酒を飲んで、かつ食べる店にシフトしたということです。アルコールも売り上げのうち30%を占めるようになりました。50%以上だと居酒屋だと言われますから、それに近いですね。この錦糸町の成功で『これからは客数ではなく、客単価の時代だ』と確信しました」(岸野氏)

有楽町「こてがえし」の店内。コンセプトは、古き良き昭和の銀座(編集部撮影)

有楽町店のコンセプトは古き良き昭和の銀座。店内には「東京百景」と題し名所が描かれている。繁華な立地ということもあり、客数もある程度見込むことができる。メイン層は40~50代で、これも客単価の引き上げにつながっている。月の売り上げは1000万円ペースを目指したいという。なお、同社での今期(2017年5月~2018年4月)の新規出店は2桁台だという。

「飲食業で今いちばん問題なのが、2030年問題。働き手もお客様も70代という時代がきます。だから、立地は重要です。名古屋や大阪にも出店してくれないかという声がありますが、東京圏、かつ駅前を条件にしています」(岸野氏)

社員が一体感をもてるよう工夫

2030年には、65歳以上の高齢者が人口の3分の1を超えると言われる。そうした将来を見据え、さらに同社が重要視しているのが人材だ。現在は売り手市場でアルバイト確保にどこも苦労している。そこで同社ではアルバイトの時給を相場より100~150円程度高めに設定しているという。また、社員が一体感をもてるよう、つねに工夫しているそうだ。

デコレーションされた男子トイレ。社内イベントの様子が飾られている(編集部撮影)

1つには、同社は社内に開発キッチンがあり、すべての業態におけるレシピ開発から、メニューに使う写真の撮影、宣伝材料制作までを一貫して行っている。店頭に掲げるポスターのレイアウトからキャッチコピーまで、社長である岸野氏自ら指示をするそうだ。これにより、全社が一体となって事業に取り組んでいるという雰囲気がつくられている。

もう1つが、レクリエーション活動だ。旅行やスポーツといった一般的なレクも行っているが、ユニークなのがデコトイレ。社員間で当番を決め、交代制でトイレをデコレーションしているのだという。

「みんなけっこう楽しみながらやっています。飾り付けを見て、『今月のデコレーション当番はあの人か』と思ったりしますし、雰囲気づくりに役立っていると思います」(執行役員管理本部部長の長谷川研二氏)

メニューのキャッチコピーからレイアウトまでチェックするという、会長兼社長の岸野禎則氏(編集部撮影)

飲食業において、スタッフ同士の雰囲気は重要だ。スタッフ確保はもちろん、チームワーク、接客業としてのホスピタリティを左右し、売り上げにも関係する。特に今は、飲食業でも見た目による驚きや、におい、音などによる演出といった、エンターテインメント性が重視されている。

その点では、東和フードサービスは有利な背景をもっていると言えるかもしれない。というのも、パチンコパーラーやカラオケルーム、ゲームセンターなどを展開する東和産業から、飲食部門として1999年に分社したのが東和フードサービスだからだ。2004年にはジャスダック上場も果たしている。アミューズメント部門と同じ社屋に入居しており、レク活動も合同で行っているという。東和フードサービスという企業や、店舗展開の方法に感じられるユニークさの秘密は、案外そこにあるのかもしれない。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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