金融緩和で所得格差はむしろ「縮小」している

「日本は先進国の中で貧困率が高い」は本当か

また、この貧困率のデータは、世帯の属性ごとに算出されている。17歳以下の「子ども」が属する世帯の貧困率は、2012年の16.3%から2015年に13.9%、世帯全体よりも大幅な低下がみられている。労働市場の改善による所得底上げの恩恵が、子育て現役世代に対して、より及んでいることは明らかである。

なお、2012年時点の子どもの貧困率は16.3%と、他国と比較しても高い水準にあった。2015年の13.9%はOECD加盟34カ国のほぼ平均値である。2012年まで事実上放置されていた子どもの貧困率上昇は、2013年から低下して、ようやく他国と同様の状況にまで至ったということである。筆者はまだ十分改善したとは言えないと考えているが、リベラルを標榜する前民主党政権で貧困率が上昇し、保守的とされる安倍晋三政権によってこの比率が低下に転じた。これは、データが示す客観的な事実である。

2018年に安倍政権が脱デフレと経済成長を優先する政策を変更する可能性は低く、日本銀行による金融緩和も続くため、労働市場は完全雇用にさらに接近しこれまで鈍かった賃金もじわじわと上昇するだろう。その結果、日本の子どもの貧困問題は、他国平均以上に改善する可能性が高いと筆者は考えている。

「日本型の経済格差」は、長期デフレがもたらした害悪

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では、筆者がより深刻と考える「日本型の経済格差」とは何か。これについて説明しよう。それは日本だけが経験した長期デフレがもたらした害悪である。

1990年代半ば以降に日本がデフレとなってから、低所得層の貧困の問題がクローズアップされるようになった。高齢化の進展で貧しい高齢者が増えたことに加えて、1990年代から就職氷河期が恒常化して所得水準を高める機会を逸した若年世代が増えた。低所得世帯の収入が低下し、デフレが進む中で労働者の非正規化が加速し、低所得世帯の絶対数が増えることで経済格差が拡大していったのである。

一般的には資本主義経済での競争の激化によって勝者と敗者の差が広がり、貧困が生まれ、経済格差が広がる状況を想像される人が多いだろう。米国ではそうした側面が色濃いが、日本では必ずしもそうとは言えない。むしろ、1990年代後半からのデフレによって、労働の対価である賃金が恒常的に低下することによって、日本型の経済格差拡大が起きていたのである。それは、資本主義の本来の役割である低所得者を含めた経済全体の富を高めるメカニズムが、「デフレ容認」という政策当局の不作為によって機能不全に陥り、経済格差を拡大させてきたと、筆者は解釈している。

また、デフレは低所得者を増やすことで経済格差を広げるが、同時に「世代間の経済格差」を拡大させる側面もある。デフレと高失業によって現役世代は事実上「経済的な虐待」を受けてきた。

一方で、高齢者の中でも金融資産を蓄積してきた人々、そして失職のリスクがほとんどない公務員などは、デフレによって相対的ではあるが豊かさを高めることができる。デフレが始まってからの、「日本型の経済格差」は、ブラック企業など日本の経済社会問題として現れていたのである。筆者の新著では、この点をさらに詳しく解説しているのでご覧いただければ幸いである。

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