日本人が知らない「ネット覇権」の世界的闘争 欧米と中露がルールづくりでせめぎ合う理由

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ただ米国は以前より、必要ならばバイ(2国家間)での合意を目指すという方針も示している。これはサイバー空間で欧米主導の包括的な合意を望まない中国などのやり方と同じだ。

例えば米国と中国は2015年に、商業的な目的で知的財産などをサイバー攻撃でお互いに盗まないことで合意している。また中国は2017年6月に、カナダとも同様の合意を結んでおり、さらに英国やオーストラリアとも合意に達している。

日本もできればこういう合意を中国と結びたいはずだが、その可能性は低い。中国からすると、サイバー攻撃の能力がない日本とはこうした同意を結ぶ必要がない。なぜなら自分たちが攻撃はしても、攻撃される心配がないからだ。つまり日本はやられるだけ。なんとも情けない話である。

いずれにせよ、こうしたバイの合意も、商業目的のサイバー攻撃に限らず、今後活発になっていく可能性はある。ちなみに中国は、ロシアとはお互いにどんな目的であってもサイバー攻撃をしないと合意している。

歩み寄りの可能性なし

ではロシアは、米国の“インターネット覇権”をどう見ているのか。もちろん中国と同様の立場で行動規範も国連に提出しているロシアは、インターネットそのものが米主導の危険なツールであるとの見解だ。

そして2017年10月、ロシア連邦安全保障会議は、西側諸国に対抗する独自のインターネットを構築するアイデアを示唆している。というのも、インターネットにアクセスするのに不可欠な「DNS(ドメイン・ネーム・システム=インターネット上のウェブサイトなどの“住所”を管理しているシステム)」が米国の影響下にあるとして警戒しているからだ。

ロシアの言い分では、米政府の一存でDNSからロシアが締め出される可能性があり、そうなればロシアのインターネットが完全に遮断されてしまうとし、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)のみが使えるインターネットを作りたいと提案しているのだ。

確かにDNSを管理する非営利組織「ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)」は、発足当初から米商務省が運営に関わっていたが、2016年以降は米国政府の手から離れている。それでもICANNを牽制するその姿勢からは、ロシアが中国同様またはそれ以上に、サイバー空間における米国の主導権にかなり警戒感をもっていることがわかる。

ここまで見てきた通り、近い将来に西側諸国と中露などがサイバー空間における包括的な行動規範などのルールで合意することはないだろう。

引き続き、歩み寄ることのない両陣営の対立は続いていくことになりそうだ。そうしたサイバー世界の国際情勢のなかで日本政府が蚊帳の外である現実に、政府関係者はもっと危機感を抱くべきなのだが。

(文:山田敏弘)

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「Foresight」編集部

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