【産業天気図・パルプ・紙】2008年後半以降は曇り模様、原油価格反転で値上げ攻勢にブレーキも
08年10月~09年3月 | 09年4月~9月 |
製紙業界の「曇り」空はなかなか晴れそうにない。原燃料高が一段落し始めている一方で、原油価格の反転によって再値上しにくい状況に追い込まれる可能性があるからだ。
過去3年間苦しめられてきた原燃料高は、目先落ち着きを取り戻し始めてはいる。原油高騰が反転し、ナフサ価格上昇ペースも落ち着いてきた。古紙価格も予断は許さないものの、ここ3ヵ月間は高原状態が続いている。夏の洋紙に続き、9月末~10月には段ボール原紙、段ボールの値上げを実施する見込みで、順調に進めば第1四半期は収益が悪化した製紙会社も、通期では改善に向かうと見られる。
一方で、円安と北米での木材消費低調が続いているために輸入チップ価格の上昇は続いている。ここ2年ほどの間に、重油から燃料転換を進めてきたLNG価格は原油価格に対して遅効性がある。また、バイオマスボイラーの燃料価格も需要急増で価格も高騰しているなど、新たな問題も生じている。
にもかかわらず、原油価格反転によって、これまでは「値上げもやむなし」、としてきた需要家の反発が顕在化してくる可能性もあるため、状況は厳しくなってくる懸念も払拭しきれない。ことに、この4月、28年ぶりに値上げが通った新聞用紙ではあるが、値上げ幅そのものは「ここ数年で倍になっている原料の新聞古紙価格の上昇に対しては明らかに不足」とメーカー側は危機感を募らせる。通常、新聞用紙価格は年間契約のため、価格改定は年度初めからスタートとなるが、この4月値上げの不足分を埋める意味で、年明けにも、との声もあったが、成否は微妙だ。
さらに、新聞用紙の値上げが、原油価格の情勢変化で後ろにズレ込んだ場合、他の印刷用紙から「自分たちはすでに何度かの値上げに応じている。新聞用紙があがらないのに、印刷用紙だけ何度も上げるのか」との反発は免れない。今期の日本製紙グループ<3893>など製紙各社の収益改善計画は値上げを前提としているだけに、厳しい状況となりそうだ。
また、紙の需要は景気の影響を受けにくいとはいうものの、食品向け段ボールやチラシなどの一部の印刷用紙では、消費需要に敏感な部分もあるため、全体としては鈍調。製紙メーカーよりも代理店や卸など販売関連への影響が懸念される。
【小長 洋子記者】
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