すき家の決断「牛丼並盛以外を値上げ」の衝撃 小川会長「人件費上昇が主な理由ではない」

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牛丼並盛の価格は据え置いた

——「牛丼並盛」(税込350円)だけ価格を据え置いた。

すき家の牛丼並盛は「国民食」で、その値段は「衆知の価格」といえる。これまで説明したように牛肉とコメの値上がりで事業環境は厳しくなっているものの、牛丼並盛だけはギリギリの企業努力で350円を維持した。

「値上げ後も売れ行きに変化は出ていない」

——日本の個人消費が回復したと判断しての値上げか。

消費はすべての部門がよくなっているわけではなく、まさに「まだら模様」だ。一部、高級品の売れ行きがよくなったりしているが、牛丼のようなベーシックな商材では依然、お客様は価格に敏感だろう。

一方で人件費の上昇などもあり「このくらいの値上げは理解してもらえるのではないか」という判断もある。まだ値上げから1週間(注:取材日は12月6日)と日が浅いので注視していかなければいけないが、今のところ入客数や(値上げをした)「大盛」「特盛」の売れ行きに変化はない。

——すき家、吉野家、松屋は牛丼価格の駆け引きを繰り返してきた。2014年4月の消費増税のとき、吉野家と松屋は値上げをしたがすき家は値下げした。今回、吉野家と松屋に値上げの気配はないが、すき家から客が離れる心配はないか。

品質とメニューの豊富さには自信があり、現在もすき家は牛丼市場でプライスリーダーのポジションにあると考えている。日本の外食市場は多様性を増し、お客様は高級レストランからベーシックなお店までをTPOに合わせてうまく使い分けている。

国内5000店舗を展開するゼンショーグループはさまざまな業態で、お客様に外食の多様性を提供している。高品質の多様性を維持することが真の豊かさにつながると思う。

大西 康之 ジャーナリスト

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おおにし やすゆき / Yasuyuki Onishi

1965年生まれ。愛知県出身。1988年早稲田大学法学部卒業、日本経済新聞社入社。欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員などを経て2016年4月に独立。著書に『稲盛和夫 最後の闘い JAL再生にかけた経営者人生』『ファースト・ペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』(以上、日本経済新聞出版)、『三洋電機 井植敏の告白』『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』(以上、日経BP)、『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』(新潮社)、『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』などがある。

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