パナソニック「EV電池」への多大な傾注と試練 盟友テスラが元パナ幹部を衝撃の「引き抜き」

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ギガファクトリーの投資額はパナが2000億円、テスラが3000億円になるとされる。

パナのキーパーソンがテスラに電撃移籍

社長就任から6年目に突入した津賀社長。本誌のインタビューに対し、「テスラと共に成長する。これが基本中の基本になる」と語った。(撮影:ヒラオカスタジオ)

ただし一見良好に見える両社の間には、水面下で熾烈な攻防が繰り広げられている。テスラが今秋、パナの元幹部を突然引き抜いたからだ。

パナ側から見て引き抜かれた人物は、元副社長で直前まで常勤顧問だった山田喜彦氏。山田氏は2010年のテスラへの出資にも関わり今日まで両社の関係を築いた「キーパーソン中のキーパーソン」(パナ関係者)。関係者によれば、山田氏のテスラ移籍は2017年9月下旬から10月上旬に明らかになり、11月中旬から米国に常駐しているとみられる。

山田氏がテスラで担う役割は判明していない。ただ、長年パナとの交渉窓口で自身もパナ出身だったカート・ケルティ氏が2017年7月下旬にテスラを退職していることから、山田氏はケルティ氏の実質的な後任に当たるのではないかという見方が強い。

テスラに引き抜かれた山田元副社長は66歳。アメリカ松下電器(現在のパナソニック ノースアメリカ)会長や副社長として海外戦略地域担当を務めるなど、海外での経験が豊富だ(撮影:ヒラオカスタジオ)

山田氏の転身がパナに与える影響も不透明だ。車載事業を統括するオートモーティブ&インダストリアルシステムズ(AIS)社社長で本体の副社長を務める伊藤好生氏は「パナとテスラの橋渡しになってくれたらいい」と話す。

一方、別の幹部は「惜しい人を失ってしまった」と沈痛な面持ちだ。マスク氏はかつて2014年の本誌の取材で山田氏について「テスラがまだ非常に小さく、成功するかどうかもわからなかった頃から、彼はテスラを強く信頼し支えてくれた」と賛辞を送っている。マスク氏としては、心強い人材を手に入れたという心境だろう。

パナにとって考えられる最悪のシナリオは、パナの手の内を知り尽くす山田氏との交渉において、今後価格や投資負担の比率など諸々の条件が不利になることだ。社内には「山田氏が移籍する前からテスラとは製品原価などオープンに共有している。交渉相手が変わったから何かが変わるわけではない」との見方もあるが、少なからずパナの社内には先行きを不安視する声が出始めている。

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