パナソニック「EV電池」への多大な傾注と試練 盟友テスラが元パナ幹部を衝撃の「引き抜き」

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総額5000億円を投じて建設されたギガファクトリー。17年1月から稼働が始まったが、「モデル3」の生産遅延で誤算が生じている(写真:テスラ提供)

パナにとって悩みの種は、テスラ側の生産体制にも潜んでいる。テスラは2017年7月から初の量産車である「モデル3」の生産を始めた。ギガファクトリーの建設もこのモデル3の生産を見据えたものだ。ただ、その後に生産の遅延が判明。10月31日に開かれたパナの決算説明会で津賀社長は「電池の生産量のほうが車の生産量を上回る状況」と述べている。

中国市場でサムスン、LGとの再戦も

ほかにもテスラについては、「投資額が大きいためフリーキャッシュフローが赤字になっており、キャッシュバーン(現金燃焼)の状況が続いている」(市場関係者)と財務面も懸念されている。

マスク氏は今後の投資計画について、「長い目で見ると、世界中にこのギガファクトリーのようなものを7カ所、10カ所つくりたい」と明かしている。単純計算すると、建設にかかる最大の金額は5兆円。現状の負担割合に基づけば、パナの投資は2兆円に及ぶ。そこまでしてテスラについていくべきなのか、パナ幹部の間でも意見は分かれているという。

こうした懸念について、津賀社長は「テスラの車はつくれば必ず消費者に買っていただける。こんな会社は他にはない。われわれは電池をしっかりつくり、テスラとともに成長していく」と説明する。人材の引き抜きや多少の生産遅延など恐れるに足りない、という様子だ。

しかし、車載電池事業はテスラだけを見ていればいいというわけではない。今後EVで有望市場になると見られる中国では、かつて家電事業で一敗地にまみれたサムスン、LGとの戦いも待っている。欧州勢など含め、現地で顧客を開拓していかなければならない。

果たして、電池を軸とする車載事業はパナの新しい成長ドライバーになれるのか。電機産業に詳しい神戸大学大学院経営学研究科の三品和広教授は「パナが車載事業に活路を見出したのは正しい。2次電池に限らず、カーナビやオーディオ、スピーカーをはじめとするインフォテインメントなどかつての“脇役”も出番が出てくる」と指摘する。100年目の節目に直面する津賀社長には、大きな重責がのしかかっている。

『週刊東洋経済』12月11日発売号の特集は「パナソニック 100年目の試練」です。
二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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