アマゾンプライム「年3900円」は超破格だった アメリカなら1万円超の付加サービスの正体

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プライム会員増から、サービス拡充へ。この動きが加速しているのが、アマゾン・プライム・ビデオです。海外ならNetflix(ネットフリックス)やHulu(フールー)、日本でもdTV(ディーティービー)などが動画配信サービスを展開していますが、それらが月額基本料をとるのに対し、プライム・ビデオはプライム会員であれば無料。コンテンツの充実ぶりも、彼ら単発カテゴリーのプレイヤーに迫ろうとしています。近い将来、単発カテゴリーを展開する競合を無力化するほどの力をアマゾン・プライムは持つようになるかもしれません。

これは、動画配信においてアマゾンが提供できるユーザー・エクスペリエンスの水準が「天の時」を迎えていることを示しています。実は動画の視聴データもアマゾンにとっては「ビッグデータ×AI」の対象。プライム・ビデオもまたビッグデータの集積装置なのです。

動画配信が日本においても「天の時」を迎えているということについては、以下の事実を指摘しておきたいと思います。

・TVを見ない人、TVを持たない人が増加
・スマホの普及率が増加(2017年3月の内閣府経済社会総合研究所「消費動向調査」によると、一般世帯のスマホ普及率は69.7%にまで増加)
・スマホ広告市場が急成長(サイバー・コミュニケーションズ「2016年インターネット広告市場規模推計調査」によると、スマホ広告市場は前年比23・7%増加の8010億円にまで拡大)
・動画配信や動画広告が急成長
・デジタル広告費がTV広告費を2018年に超える(電通による2017年6月予測)

どの動画を視聴したかのみならず、どの場面で興味を失い視聴をやめたか、あるいは動画広告に対する反応などをリアルタイムで把握できます。こうして得たデータを新たな番組制作や広告制作に反映させれば、そのクオリティは一層高まるに違いありません。またこうした魅力的な動画コンテンツが、さらにプライム会員を増加させていきます。

今後起きることとは?

『アマゾンが描く2022年の世界』(PHP研究所)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

これから新たに起きる動きとしては、「商品の動画化」が考えられます。サイト内での商品説明を動画にする可能性がありそうです。アパレル商品などは静止画よりも動画で紹介したほうがユーザーに対して親切です。大手ファッション通販サイトのゾゾタウンなどはすでに着手していますし、アマゾンも動画制作のノウハウを培っているわけですから本業であるネット通販に生かさない手はありません。

動画単体でも、新たなプラットフォームを構築しています。2016年には「アマゾン・ビデオ・ダイレクト」がスタートしました。これは動画のクリエイターが制作番組を配信するプラットフォーム。米国ではすでに、クリエイターが制作したものはYouTube(ユーチューブ)ではなく、アマゾン・ビデオ・ダイレクトに流し、プライム会員の評判を得る、といった動きがあるようです。

なお、私自身のiPadには、動画アプリとしては、NTTドコモのdTV、GYAO!、AbemaTV、そしてアマゾンのプライム・ビデオを入れてあります。お笑い番組好きの私としては、オリジナル番組含めてお笑いコンテンツが最も充実しているアマゾンのプライム・ビデオを見る機会が圧倒的に増えています。とくに以前にDVDで購入していた芸人さんの作品も数多く見られることは、お笑いファンとしてはたまらない魅力となっています。

田中 道昭 立教大学ビジネススクール教授

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たなか みちあき / Michiaki Tanaka

シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略およびミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)などを経て、現在は株式会社マージングポイント代表取締役社長。主な著書に『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)、『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH 米中メガテック企業の競争戦略』(日本経済新聞出版社)など。

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