アマゾンプライム「年3900円」は超破格だった アメリカなら1万円超の付加サービスの正体
ベゾスは、2015年の株主向けレターのなかで、「プライム会員サービスの価値を、会員にならないと自分が無責任だと思うような存在にしたい」と語っています。プライムは、ベゾスがそこまで豪語するまでの納得の充実ぶりということです。
一方、拙著『アマゾンが描く2022年の世界』でも詳しく解説しているように、ベゾスは超長期思考。短期的に投資を回収しようとはまったく考えていません。最優先は、プライム会員そのものを増やすことにあります。
プライム会員になると、それまで本やDVDといった限られた商品しか買わなかった顧客が、ほかの商品カテゴリーにまで購買の手を伸ばすといいます。またプライム会員になると購買頻度が増え、また客単価も高くなります。
こうなると顧客も他のECサイトでは買い物をしなくなります。アマゾンから切り替えようにもスイッチングコストが発生してしまうためです。アマゾンによる顧客の囲い込みがこうしてますます進んでいきます。
既存のプライムサービスも進化している
一方では、既存のプライムサービスも進化しています。配達の速さ、対象商品・サービス群の拡大、対応機器の拡大。ここでいう対応機器とは、アマゾン・アレクサやアマゾン・エコーのこと。いずれも、プライム会員でなければ受けられないサービスです。これらの相乗効果によってプライム会員が増え、またプライムサービスの質も向上していきます。
プライム会員が増えれば、さらに大きな波及効果が期待できます。たとえば、プラットフォームそのものが拡大する。プライムサービスの売りの1つは第1に配達の速さであり、その恩恵を受けている顧客は、ほかのセラーに対しても同等の配達速度を求めるようになるでしょう。
すると、より多くのセラーがFBA(フルフィルメント by Amazon)を利用し、お急ぎ便や当日お急ぎ便を無料で提供し始めるはず。これによってさらにプライム会員が増え、プラットフォームが拡大する。より多くの顧客データが集まる。こうした好循環がどこまでも続いていきます。そのきっかけとなるものが、プライム会員の増加。利益度外視でアマゾン・プライムのサービスを拡充させている理由です。
なお、8500万人ものプライム会員を抱えているアメリカの年会費99ドル(約1万1000円)なのに対して、日本での年額はその3分の1強。これは、アマゾン本体の北米事業とAWS事業での利益をアマゾン本体の北米以外の事業への展開に投資しているから可能になっている価格戦略であると考えられます。
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