復活目指す航空大国ロシア、”スーパージェット100”の全貌
魅惑のロシア市場 衝突の予兆も
欧米がこぞって入れ込むのは、スーパージェットそのものの可能性を信じているからではない。ロシアの膨大な航空機市場に接近する切符を手に入れるための協力である。
ボーイングの推計によれば、ロシアの航空機需要は年率6%で拡大し、20年間で1060機、700億ドルの累計需要が見込まれる。うち43%はリージョナル機だが、B737サイズの需要は470機、300億ドル、同777・787サイズの需要も110機、200億ドルある。
ボーイングにすれば、200億ドルの市場のスーパージェットを支援することで、500億ドルにツバをつけられるという胸算用が成立する。
が、そうは問屋がおろすかどうか。当面、ロシアはスーパージェットを成功させるために、辞を低くして欧米に協力を乞うている。しかし、ロシアがリージョナル機だけで満足するはずはない。OAKが目指すのは、最低でも、ボーイング、エアバスに続く世界第3位の地位だろう。
実は、ロシアはすでに130席の「SSJ1XX」をローンチさせ、イリューシンとヤコブレフが共同でその上の130~170席の「MS21」を計画している。この領域は、現在の737だけでなく、737の後継機と競合する。
それでなくとも、すでに戦闘機分野では、ボーイングとスホイは完全なライバルだ。今も、マレーシアの次期戦闘機のポジションをめぐって、ボーイングのF18スーパーホーネットとスホイのSu30が激しい空中戦を繰り広げている。両社の関係は安泰ではない。
07年春、タタルスタン航空(タタルスタン共和国)が発注したボンバルディアのCRJ6機が到着したが、ロシア政府は型式証明を発行しなかった。スーパージェットへの支援策の一環だろうが、自国の利益に反するとなれば、強権を発動するのがこの国の流儀である。737クラスの領域で欧米と激突するとき、ロシアはどう出るか。
いや、今は、先の心配より、目の前のスーパージェットだ。ローンチカスタマーのアエロフロートへの初納入は来年初めが予定されているが、「来年後半にずれ込む」という観測が流れている。「機体が堂々としているだけに、(燃費の1割改善をうたっているが)737−300の倍の燃費がかかるのでは、という見方もある」(大手商社幹部)。当然ながら、航空機の本当の価値は、実際に運航してみるまでわからない。
(週刊東洋経済編集部)
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