「ペッパー」開発者が古巣に突きつけた挑戦状 革新機構も出資、調達額は計約80億円に

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未来創生ファンドは独立系投資会社のスパークス・グループが運営するファンドで、ほかにトヨタ、三井住友銀行が出資する。官民ファンドのINCJは、シャープへの出資など再生ファンドのイメージが強いが、出資件数ベースでは78%(2017年9月末)がアーリーステージ/ベンチャーへの出資だ。

肝心のロボットは「まだお見せしない」

スパークス・グループ、産業革新機構との会見でも、ロボットの具体的な内容は明かされなかった(記者撮影)

4日の会見で、林氏はロボットの開発について「当初の計画に対してオントラック(=計画通り)に進んでいる」と話した。しかしロボットの実物はなく、顔のようなものがイラストで見せられただけ。しかもこの顔らしきものすら「大きくは変わらないと思うが最終形ではない」(林氏)。大きさについても「ソニーのアイボより大きく、ペッパーよりは小さい」(同)と随分と幅がある。

「動くのか、それとも据え置き型なのか」「プログラムを公開して他社がアプリを開発できるようにするのか」などの質問に、林氏は「お楽しみに」と繰り返すばかりだった。価格については、言葉を選びながら「ハイエンドなAI技術を用いるので、ものすごく安いということにはならない」とだけ語った。

「ラブとロボットを掛け合わせた新世代家庭用ロボット『LOVOT』の開発をしている」「癒しを与える、やる気を与えるロボット」と言われても、ロボットの具体的なイメージを持つことは難しい。

「飽きられたくない」との理由から、開発中のロボットは出資者以外には非公開だ。「出資したい」と言われたことがないため、古巣の孫社長にもまだ見せていない。ただ、試作品を見せられた出資者は一様に「グルーブXと同じような開発をやっているロボットベンチャーは世界に1社もない」と口をそろえるという。

林氏は開発で一切妥協はしていないと繰り返す。「世界でも見たことのないようなモーターが(ロボットの中で)回っている。下町ロケットですかね」(同氏)。

実際のロボットのお目見えは2018年秋、サービス開始は翌2019年となる見通しだ。妥協せずにおよそ100億円かけて作る「癒しロボット」は稀代のベンチャー起業家であるイーロン氏、さらに孫氏を仰天させるほどのものとなるか。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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