中国「新幹線軌道」を走る謎の通勤電車の正体 多くの市民はLRTだと誤解している?

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日本の鉄道チケットのシステムは。乗車券+特急券という仕組みで販売されているが、中国では発券の際に列車が指定されることもあり、高速料金を含めた包括料金で設定されている。これに列車の種別、等級、区間運賃がすべて含まれることになっている。ちなみに、広珠城際軌道交通の広州南―珠海間は全線で70元(約1400円)となっている。ルート上の駅を各駅もしくは交互に止まる列車があり、全線116kmある区間を70~80分かけて走る。中間駅を無停車なら40分で走破するとされるが、いまのところ同区間の無停車列車は存在しない。

CRH6はすべて普通車のモノクラス。座席の方向転換もできない

CRH6が走る広珠城際軌道交通が敷かれている地域の交通インフラの歴史について簡単に述べてみよう。なお、「城際」とは欧州などで都市間優等列車を指すインターシティ(IC)から借りたもので、中国側が発表している同線の英語名称もGuangzhou Zhuhai Intercity Railwayとなっている。

珠江デルタ地区の鉄道網は、広州―深圳―香港・九龍半島間をつなぐ東岸ルートは、第1次世界大戦開戦前の1910年開通と長い歴史がある。これは、当時、香港を植民地とし、広州に租界を持っていた英国の政策によるところが大きい。

鉄道には懐疑的だった

一方、西岸ルート(広州―中山―珠海―マカオ)は今世紀に至るまで鉄道とは無縁だった。なぜなら、西岸側は珠江の支流が毛細血管のように流れており、地盤も緩く、とても鉄道を敷くような地形ではない。そのため、香港から西岸側にある主要都市に行くのに、高速船で行き来するという状況が長年にわたって続いた。

高速道路も西岸側で整備されたのは東岸より5年以上後だった。そんな背景もあり、珠海をはじめ珠江デルタ西岸の住人は都市間交通インフラについて長年悩みを抱えていた。

そんな背景もあり「いよいよ珠海に鉄道が来る」ということが決まっても、地元メディアをはじめ、市民たちは「鉄道が敷かれても、そんな大層なものができるはずはない」と懐疑的な意見が多かった。

珠海の人々は鉄道が来るにあたり、「広州との間をライトレール(LRT)で結ばれる」と思っていたという。これは、メディアの鉄道そのものに対する知識が大きく欠けていたという事情がある。

次ページ当初は「LRTができる」と誤解
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