中国「新幹線軌道」を走る謎の通勤電車の正体 多くの市民はLRTだと誤解している?

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中国では、1990年代前半に都市郊外を走る軌道系交通機関として大連にライトレール(軽軌)が初お目見えした。当時の中国は、乗客が利用する鉄道といえば客車列車しかなく、気動車も電車も存在しなかった。そのため、都市部や近郊を走る日本でいう電車のような乗り物を軽軌と呼んでしまう奇怪な現象が起きた。いまだに上海人の中には、地下鉄を軽軌と呼ぶ人も少なくない。

こういった誤解のもと、珠海の官製メディアは「広州との間を“軽軌”がわが町とつながる」と熱烈に報じた。その結果、広州―珠海間に入るのはフル規格の列車なのか、それともライトレールなのか、ワケがわからなくなってしまった。

時速200km規格の高速鉄道ができたものの…

完成したのは紛れもなく、時速200kmでの営業運転が可能な高規格の高速鉄道だ。珠海西部の住宅街には堂々とした高架があり、そこをCRH6が数分ごとに走っている。

途中駅には待避線がないため、ホームドアも付けられている

それでもなお珠海では、今も「わが町を軽軌が走っている」と誤解している市民が少なくないという。当初「大間違い」をしたメディアの失敗が遠因であることは疑いないが、市内を走るCRH6は大きなカーブが多いこともあり時速70~80kmしか出ていないという事情もある。素人目には高速鉄道のパフォーマンスとは程遠いのだ。

珠江デルタ西岸の人々は、日本でいう在来線電車の通勤を飛び越え、いきなり「新幹線通勤」を実現してしまった。中国では大都市圏への人口集中が進み、周辺の衛星都市を巻き込んだ「都市生活圏の膨張」が進んでいるが、はたして中国全土でこうした新幹線通勤の動きが続くのだろうか。中国は時速200km以上の列車が走る高速ネットワークが世界最大であることを誇示しているが、数字だけを鵜呑みにせず、実情を知ることが重要だ。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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