日本人は「軍事的常識」が著しく欠如している 「集団的自衛権」の理解もまちまち

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冨澤 暉(とみさわ あきら)/1938年生まれ。元陸上幕僚長(1993~1995年)。東京都立日比谷高校、防衛大学校(応用物理)を卒業後、陸上自衛隊に入隊。師団長(東京)、方面総監(北海道)などの指揮官職を経て、陸上自衛隊トップの幕僚長に。父は芥川賞作家の冨澤有為男(撮影:尾形文繁)

──議論の主要テーマにもなっていました。

米国の海軍と日本の自衛艦が並走しているときに、向こうが撃たれたら自衛艦も撃ち返していいのかという話だ。最高責任者が防衛出動をかけなければ集団的自衛権行使にならないから、あくまで正当防衛権になる。自衛隊法95条の武器使用に「国家は」とは書いてない。「自衛官は」とある。自衛官は自分の持っている武器のみならず、一緒にある武器を守るために、使用してよろしいと書いてある。それは英語でユニット・セルフディフェンスという。集団的自衛権とは関係ない。

──国内刑法が認めている正当防衛権なのですね。

あくまで自衛官の責任になる。そういう整理がされていない議論は多い。PKO(国連平和維持活動)における武器使用も駆け付け警護も集団的自衛権とは関係ない。国際法上の戦争をしない間は整理されていなくてもいいが、何かあった場合に大いに問題になる。極めて常識的な問題として、集団的自衛権の行使と正当防衛権に基づく行為はきちんと分けないといけない。規則・法律と、現場における行動とがあいまいな形のままだと、とんでもないことになりかねない。

ミサイル防御にはあまりにも問題がありすぎる

──ミサイル迎撃ではどうですか。

振り返れば第1次安倍晋三内閣のときに安保法制懇談会ができ、そのときに4事例が出てきた。その中に北朝鮮から米国に向かっているミサイルを日本が落とさないと問題になるのではないかとの質問があった。これも実は破壊命令を出すかどうかの法律上の問題。

──できるのですか。

ある条件が整えば邀撃(ようげき)はできるに違いないが、ロフテッド軌道だったら、飽和攻撃を受けたら、弾頭が分かれたらどうかなどと、いろんなケースがありえて、ミサイル防御にはあまりにも問題がありすぎる。私自身は陸上自衛隊の戦車兵だったので専門家ではないが、自民党の国防族の中には敵地攻撃をやろうと言う人もいる。米軍でさえ手こずり、目標情報さえつかめない。敵地攻撃で完璧を期すことはできないと感じている。

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