インドネシア在来線高速化も中国が奪うのか 成立寸前でさらわれた高速鉄道の二の舞いも

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だが、再選2期目を目指すジョコウィ大統領も崖っぷちである。ジョコウィ政権が掲げるインフラ整備は、高速道路、発電所、港湾、鉄道、どれをとっても完成しそうもない。変わったことと言えば経済開放くらいで、中国からの投資が1年間で5倍以上に増加したことだ。

北本線に沿って2015年に開業したCIPALI高速道路。ジャカルタから東に約280kmの区間が高速道路で結ばれたが、繁忙期を除けば閑散としている(筆者撮影)

2014年の大統領選に立候補し、次期大統領選でも対抗馬と見られているプラボウォ・スビアント氏は国内では不人気が続く。ジョコウィ大統領の再選という見方も多い。となると、ジョコウィ氏の性格からして、「あと5年ください、それまでにはすべて完成させます」と、国民に頭を下げる可能性はある。

そこに加えての北本線高速化である。ジョコウィ大統領は実はこの事業に関して、公の場での明言を避けている。だから、ほとんどの国民がこのプロジェクトを知らない。大統領の本心としては、次期政権の目玉施策として、北本線高速化に着工したいのではないか。

北本線高速化の行方は大統領選次第

北本線高速化事業の工期は着工後4年程度と試算されている。第2次ジョコウィ政権がスタートしてから着工しても任期中に完成する数値である。次期大統領選に勝算があるならば、それまで黙秘を続けるだろう。そして第2期政権発足後に、中国に着工させる。ジャカルタ―バンドンの高速鉄道計画も日本がF/S調査を行ったのに中国に発注した。それと同じ構図だ。逆に、大統領選の勝算が五分五分という判断となれば、日本と組むことを前提に前倒しで着工させる。今はジョコウィ大統領が判断に迷っている時期ではないかと筆者は予想している。

インドネシア初の国産ディーゼル機関車CC300型が抜擢された特別列車(筆者撮影)

冒頭の特別列車にしても、あれははたして、いったい何のための列車だったのか。国威を高揚させる絶好のチャンスのはずが、政府が何のアナウンスもしなかったというのは、不気味ささえ感じさせる。当初乗車予定だったといわれる、ブディ・カルヤ・スマディ運輸相も乗車しなかった。

これが北本線高速化事業の内実をよく語っている。はたして実現するのか、誰が受注するのか、正直この件に関して、誰もわからないのである。ただ、1つ言えるのは、日本は甘い考えは捨てるべきだということだ。関係者内では、もう日本が受注したも同然のようにとらえられているが、政府は何も発表していない。日本がすきを見せた瞬間、また中国にかすめ取られるかもしれない。他国の追随を許さない、「日本にぜひお任せしたい」と言われるような提案をF/S調査の最終報告で出してもらいたいものだ。

高木 聡 アジアン鉄道ライター

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たかぎ さとし / Satoshi Takagi

立教大学観光学部卒。JR線全線完乗後、活動の起点を東南アジアに移す。インドネシア在住。鉄道誌『鉄道ファン』での記事執筆、「ジャカルタの205系」「ジャカルタの東京地下鉄関連の車両」など。JABODETABEK COMMUTERS NEWS管理人。

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