ナイキを救った日本企業「日商岩井」の勇気

生涯投資家・村上世彰「僕なら援助しない」

――ベンチャー企業を取り巻く環境は、今と昔でどう違うでしょうか?

12月3日、下北沢B&Bにて『SHOE DOG(シュードッグ)』刊行記念イベント、「かっぴー×鎌田慎也『なぜ私たちはNIKEに魅せられるのか?』」が開催されます。詳しくはこちら

私は今、関連会社を通じてアメリカのベンチャー企業に多額な投資をして、筆頭株主になっています。トレードシフトという名の会社で、企業間取引のクラウドプラットフォームを提供しています。この会社の最初の大型顧客はナイキ本社です。ナイキだけで、1兆円規模の取引の処理をしています。ナイキのシステムを作るのに、人件費も入れると10億円くらいかかっていると思います。先行投資型のビジネスで、今はおカネがない。いわゆる自転車操業です。まさに、昔のナイキと同じですよね。

でも、その頃と比べたらいまのほうが資金集めは楽だと思います。銀行だけではなく、ファイナンスのシステムが発達していますから。先に話したウッデルの両親からの8000ドルの話が象徴的ですが、内輪から資金を調達するのではなくて、ベンチャーキャピタルがあるなど、今ではもっとシステマティックになっています。

――村上さんがファンドを運営していた2000年代と、今の違いは?

2000年ころは、堀江貴文氏や三木谷浩史氏のように、価値のあるアイデアを持った人が率いる企業におカネが集まっていました。それが現在ではもっと進化していて、アイデアを出した瞬間に、何十億というおカネが集められる時代になっています。これはファイナンスの仕組みが、インターネットの普及とともに、進化したから。

しかしナイキの場合はITではなく、製造業ですから、もっと大変だったと思います。日本で製造業のベンチャーというと、ユニクロ(ファーストリテイリング)の柳井正氏が思い浮かびます。彼と初めて会ったのは、私が通商産業省(通産省。現・経済産業省)にいたときで、すでにユニクロは上場していました。

今思うと、当時、柳井さんも自分のやりたいことを思いきり話していました。フィル・ナイトのように自分の発想を世界に打ち出していました。そして、いまやユニクロはファストファッションのブランドとして、アジアを中心に世界に進出している。世界で表現している日本発の唯一のアパレルじゃないでしょうか。私は、海外でユニクロをみると、とてもうれしくなります。

『シュードッグ』でチャレンジ精神を学べる

――柳井さんとフィル・ナイトは似ている?

やはり、いちばん似ている部分は、思い込んだらとことんやり遂げるというところではないでしょうか。

――柳井さんやフィル・ナイトのような起業家は、これから増えるでしょうか?

ファイナンスがしやすくなっているので、起業家は増えると思います。ただ、インターネットとその技術にそこまで依存しない、流通や製造の業界では少し難しいかもしれませんね。

日本でも、もっと起業にチャレンジしていく人が増えてもいいと思う。でも、今の日本は閉塞感があって、アメリカに比べるとチャレンジしにくい。

さらに、ノーベル賞を取るような研究者でも新しいITの発明家でも、世界の学会やマーケットを対象にしなければならないので、海外に出ていく人が多いように思います。日本という国でビジネスをすることにあまり意味がなくなっているのかもしれません。

ですが、日本のマーケットは安定していて、何をするにもやりやすいという面もある。フィル・ナイトの「チャレンジ物語」は、今の日本に対して重要なメッセージになりうるのではないでしょうか。

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