一方で、企業側のメリットとしても、
との美辞麗句が並びます。
思わぬトラブルに遭遇する可能性も
しかし、「厚労省が進めているから」と何も考えずに安易に導入することは、労使双方にとってメリットがないばかりではなく、思わぬトラブルに遭遇する可能性もあります。
労働者側にとっては、デメリットとして、就業時間が長くなる可能性があるため、労働者自身による就業時間や健康の管理がより一層必要になること、本業の会社との関係で職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務違反などのトラブルを招く危険性があるということが、11月20日の厚労省検討会でも指摘されています。
また、企業側のデメリットとしても、労働者の就業時間の把握・管理や健康管理への対応、労働者の職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務をどう確保するかという懸念があるとされています。
法的なリスクとして大きいのは、労働基準法の残業通算規定です。労働基準法第38条では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と規定されています。ここにいう「事業場を異にする場合」とは、労働基準局長通達によると、事業主を異にする場合をも含むと解釈されています。
たとえば、早朝6~8時まで副業し、9時から本業(所定労働時間9~18時、昼1時間休憩)を行うという場合、すでに1日の中で2時間労働していることになります。労基法では、1日8時間を超える労働が残業として取り扱われますので、このケースでは、本業において6時間目以降については所定時間内であるにもかかわらず、残業になってしまうのです。また、本業を9~18時まで行った後、19時から復業する場合、すでにこの日は8時間働いていますので、副業先では1時間目から残業扱いになってしまうのです。
この通達は1947(昭和22)年に出された非常に古い通達なのですが、現在でも厚労省は解釈を変えていません。上記通達が出された当時は、現在のように別の会社での副業を推進するという動きもありませんでしたし、むしろ事業所を分けて働かせることにより、労働時間を形式的に減らすという脱法行為を警戒したのかもしれません。しかし、現在ではそれは別の対処が可能なので、時代遅れの規制といわざるをえません。
現在は、副業先での勤務時間を把握することが困難なことから、この規定を厳格に適用している会社はほとんどみられませんので、副業に関連して残業代を払っている企業はおそらくないでしょう。しかし、今後副業の動きが拡大すればするほど、後になって「残業代が発生している」という主張を労働者側から受けるリスクが生じることになります。
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