世界経済混乱からの回復は09年第2四半期、原油価格の下落は商社の収益に影響ない--勝俣宣夫日本貿易会会長(丸紅会長)会見
--米国証券会社大手リーマンブラザーズ破綻の影響をどう見るか。
直接的な日本経済への影響としては、リーマン発行の社債や株式、リーマン向けの融資を持つ金融機関への影響がある。これが金融機関の信用収縮につながるかもしれない。間接的には米国経済が心理的にも実体的にも落ち込む。ドル安や株安で米国の個人消費も落ち込むことで、日本やアジアの輸出も減速して、それでアジアの成長も落ちて、日本からアジアへの輸出も落ちるという悪循環になることを恐れている。
--回復時期のメドは?
今年度はなかなか難しい。期待を込めて言えば、来年の第2四半期くらいには落ち着いてほしい。
--日本の政治に要望することは。
社会保障制度などの問題が解決していない中で首相の辞任で政治空白が出来ている。しっかりした補正予算を作って、与党が政局にせず、3年後の日本の税制などを与野党が明らかにすべきだ。ここを政局にして、なにもせずに解散、といった空白が生じることがないように手を打ってから解散してほしい。
--日本の経済の状況を天気に例えるとどうなるか?
米国、欧州、日本は経済にかげりが出てきたとはいえ、先進国の今年度の実質経済の伸びは1%位。新興国は6~7%の見通し。IMF()が今年度、来年度の世界経済の見通しを約4%と発表している。04年度から07年度まで世界は5%成長で世界同時好況と言われた。4%前後なら不況や景気後退ではない。中東や新興国が支えて、4%行けばまあまあと思っていたが、米国の大手金融機関の破綻の影響は大きい。IMFの見通しがどうなるかだが、4%は割り込むのではないか。
資源価格が沈静化しているので、ある程度は相殺となればいいが。差し引いてもリーマン破綻などの問題の方が大きいかもしれない。
天気に例えると、この間まで薄日だったのが、まだ雨雲がある程度。日本企業は前回の不況時に三つの過剰、雇用、設備、債務の過剰を解消し筋肉質に強くなっている。設備投資や輸出は落ちているがまだ強い、まだ踏みこたえるところがあると考えている。
--資源価格の調整、とくに原油価格の急落の日本経済や世界経済への影響。総合商社の経営に与えるインパクトは。
鉄鉱石や石炭は年初に価格が決まっている。原油は7月半ばに147ドルをつけた後に90ドル台まで急落したが、日本の商社や日本企業の今年度の予想は85~90ドル位でスタートしている。昨年度は平均72~73ドル、その前年が65ドル位だったので10ドルずつの石油の上がりを踏まえていた。
147ドルは実体需給ではなく、投資マネーの影響だ。実体の需給バランスも強いが、マーケットが小さいのでマネーゲームが効いた。米国でマーケットの実態を調査する流れで、投資が引くことにより、実体が落ち着いた。
この辺ならみんなが予測した値段。中東各国の予算も60ドル台でほとんど組んでいる。産油国経済が問題になることもない。資源高、原油高を転嫁できず、企業収益を圧迫していた。インフレの脅威も落ち着いていけば、望ましいことだ。(こうしたプラス面が)米国の大手金融機関の破綻の影響とバランスが取れるのではないか、と。
日本の商社は石油権益を持っているという意味では100ドル台が続くよりも収益は落ちるが、年度の平均価格では100ドル以上になるので収益に大きな悪い影響になることはない。
化学品など様々な商売をしているので、原油価格が落ち着いてくれば商社の収益にとってもプラスの方向になる。
-- 中国の経済状況をどう見ているか。
中国は内需にかなりシフトできつつある。中国政府が経済を、為替、金利、付加価値税などをコントロールしながら、2桁成長はいかなくても少なくとも9%成長は維持できるのではないか。
(山田雄大 =東洋経済オンライン)
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