誤算と自爆の果ての「小池劇場」閉幕のあと 「希望の党」の存在意義、都政の行方は?

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「政界渡り鳥」の異名通り、四半世紀前の細川護煕元首相による日本新党結党・細川政権誕生以来、小沢一郎元自民党幹事長、小泉純一郎元首相と「時の最高権力者」に寄り添うことで出世の階段を駆け上がってきたのが小池氏だ。しかし、都知事選圧勝で巨大組織のトップとなり、国政政党・希望の党代表として「初の女性首相」も目指したことで、それまでの「権力の脇役」から「権力者そのもの」へとの変身が際立ち、「政治家人生の暗転」(自民長老)へとつながった。

「小池語」とも揶揄される横文字多用のメッセージや、「小池グリーン」に象徴されるファッショナブルな装いで映像メディアを手玉にとり、満員御礼の「小池劇場」の主役を演じ続けてきた小池氏は、その政治手法から「トリックスター(手品師)」(自民長老)とも呼ばれる。「自民党をぶっ壊す」と叫んで首相の座に就き、「それでも地球は動いている」とのガリレオ・ガリレイの名言をひいての「郵政解散・総選挙」の大勝で長期政権を実現した小泉氏を「元祖」とすれば、小池氏はまさに「2代目のトリックスター」だ。

ただ、任期を全うして惜しまれながら政界を引退した小泉氏はなお、次男で「将来の総理総裁確実」ともてはやされる小泉進次郎・自民党筆頭副幹事長の後見役として国民注視の存在だが、現状の小池氏には初の女性都知事を最終経歴にした「過去の人」となる近未来も否定できない。今後の都議会運営混乱などで都政の停滞を招けば、20年夏の都知事選での再選にも黄信号が灯る。そうなれば、国政復帰どころか「一丁上がりの前都知事」にもなりかねない。

「落下傘なしで崖の上から飛び降りる覚悟」で挑んで圧勝した都知事選から1年3カ月。そして9月25日の希望の党結党・代表就任宣言からのジェットコースターのような51日間で見せた「政治家・小池百合子の真実」には、政治家はもとより国民も不満と失望を隠さない。

「爆発」より「地道な努力」が残された唯一の道

政権の仕切り役を自認する菅義偉官房長官は14日の会見で、小池氏の「二足のわらじ」からの撤退を「(政治家としての)常識だ」と切って捨てた。政界引退後もなお影響力を保持する古賀誠・元自民党幹事長も同夜のテレビ番組で「(小池氏の一連の行動は)無責任の極み、希望が失望、絶望になってしまった」と厳しく批判した。両氏は小池氏と同様に独力で這い上がってきた「たたき上げ政治家」でもある。

代表辞任翌日の15日昼前、小池氏は「金融都市東京」を売り込むためシンガポールに飛び立った。「首都のセールスレディ」としての海外出張だ。語学力を駆使する都知事として、今後も外交でのアピールに力を注ぐ構えで「得意分野での勝負」で再浮上を狙う。

都知事選圧勝の際、「私は10年に1回、爆発するの」と誇らしげに語った小池氏だが、10年後は後期高齢者だ。「東京大改革は始まったばかり。一歩一歩実績を積み重ねしかない」との言葉通り、「見果てぬ夢と野望」を封印し、派手なパフォーマンスより地方のリーダーとして地道に努力することが小池氏に残された「唯一の道」ではないか。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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