「めちゃイケ」がついに終わってしまう理由 20年以上も続いた長寿番組が抱えたジレンマ

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通常、ゴールデンタイムに放送されるようなバラエティ番組では、特定のフォーマットがあって、やることが決まっていることが多い。そのほうがなじみの視聴者にとっては見やすいし、初めて見る人でも興味を持ちやすい。しかし、「めちゃイケ」にはそれがない。企画は毎回変わり、それぞれのメンバーが担っている役割やキャラクターのようなものは、毎週見ていないと理解しづらいところもある。

いわば、「めちゃイケ」は「連ドラ」なのだ。すでに20年以上も続いているのだから、「渡る世間は鬼ばかり」や「水戸黄門」にも匹敵する長寿ドラマである。めちゃイケメンバーの間では家族的なコミュニティが形成され、その成長や変化を視聴者が長年にわたって見届けてきた。その結果、多くの人に愛される番組になった。

乗り越えてきたさまざまな危機

しかし、番組の歴史の中ではさまざまな危機があった。最大の危機は、2010年に岡村が体調不良で無期限休養に入ってしまったことだろう。めちゃイケメンバーの精神的支柱だった岡村が抜けたダメージは深刻だった。

このときには、岡村の穴を埋めるべく、大規模なオーディション企画が行われた。そして、そこで新たにジャルジャル、たんぽぽらが新メンバーとして加わることになった。

ところが、岡村は5カ月間の休養を経て、無事に帰ってきた。これにより、岡村の穴を埋めるはずだった新レギュラーの役割が宙に浮いてしまった。レギュラーの人数が増えすぎたため、それぞれにスポットを当てることが難しくなり、見るほうもそこに思い入れを持つことが困難になってしまった。

さらに、番組があまりにも長く続いたことで、途中から見る人にとっては敷居が高い番組になってしまった、という問題も出てきた。「めちゃイケ」には、独自の歴史があり、独自の演出があり、メンバーそれぞれが別々のキャラクターを背負っている。しかし、いまや、「スッキリ」で朝の顔となった加藤浩次や、アラフォー女性芸人の代表として数々の番組に出演する大久保佳代子をはじめとして、個々のメンバーが別の番組でも自分の持ち味を出して活躍するようになってきた。

新しく入ってくる視聴者が少なく、長年見てきた人にも見放されつつある。ここ数年は視聴率1ケタが続いていて、終了は時間の問題だといわれていた。

最近の「めちゃイケ」でも象徴的なシーンがあった。11月11日放送回で、岡村がメンバーに番組終了を告げて回るという企画が行われた。そこで、メンバーの1人である鈴木紗理奈が「めちゃイケ」を見ていないことが判明したのだ。総監督の片岡が鈴木を問い詰めると、彼女は慌てて弁明した。

「すいません、テレビを本当に見ないんです」「テレビがいちばん面白いゴールデンタイムといわれる時間は、私、いちばん忙しいんです。晩ご飯、宿題しなさい、で、寝る、で、8時にベッド入れて、こうでああで、いちばん私が私じゃない時間なんです」

そう言い訳をする鈴木の下には「『めちゃイケ』が終了する社会的背景。」というテロップが出ていた。「めちゃイケ」はいまや視聴者だけではなく、当の出演者自身からも見限られていたというのだから、なんとも皮肉な話である。

番組内では半年後の終了に向けて「めちゃイケ シュウ活(MSK)プロジェクト」という新しい企画が立ち上げられることが宣言された。これは、番組の終了までにメンバーがやりたいことを全力でやりきる、というもの。最後まで新しい企画にこだわり、攻めの姿勢を貫くところはさすがだ。この番組らしい美しいエンディングを迎えることを期待したい。

(敬称略)

ラリー遠田 作家・ライター、お笑い評論家

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らりーとおだ / Larry Tooda

主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など著書多数。

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