欧州でもスタート、列車「混雑情報」開示の実力 山手線や東急に続くのは英国とドイツだった

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分析するための基となるデータは、「車両ごとの重量変化」のほか、「監視カメラによる分析」「改札ゲート通過者数のカウント」「ドアに取り付けたセンサー」「Wi-Fi接続者数」をそれぞれ得たうえで算出するだけでなく、車内に取り付けた「3Dセンサー」を使って人数をカウントすることもあるという。これらのデータによる解析の結果を集約し、即時にディスプレーへと表示するというわけだ。

オープンキャパシティの代表、ゲリット・ボエムさん(筆者撮影)

ただ、混雑状況を示すだけなら、車両が「カラの状態」と「人が乗ったとき」の重量の差を計算すれば、混み具合の現状を判断することができる。しかし重さの差だけで分析すると、いざ自分が列車の乗りたい駅で大勢が降りたり、逆にたくさんの利用客が乗り込んだら、前駅までの混雑状況を使ってのディスプレーだけでは用をなさないことになる。

このような点をどう解決しているのか。ボエムさんに詳しく分析方法を聞いてみた。

「混雑状況ディスプレーは主に3つのソースから割り出しています。1つは、過去1年間の乗客動向を蓄積した累積データで、これを各列車、車両ごとに調査しています。このデータを集めることで、季節や時間帯ごとの需要の変動だけでなく、沿線でのイベント開催や運行トラブルなどの際にどういう変化を起こすか傾向をつかむことができます」

長期データの分析がより重要だ、とボエムさんは強調する。

過去3カ月のデータや天気予報も活用

「2つ目は、直近3カ月の需要変化をとらえ、予測の精度を上げます」

この段階では主に、車両の重量差から求めた乗客数と、改札ゲートの通過人数のデータを使用するという。

「3つ目は、天気予報やイベントの催行予定なども加味し、ディスプレーに公開する需要予測が実際の混雑状況に近づくようにします」

列車が走る直前の微調整では、監視カメラ(CCTV)での利用客の出入りと各車両の重量差データを用いている。こうして得られたデータが、ロンドンではショーディッチ・ハイストリート駅のディスプレーのほか、ウェブ上で見ることができる。筆者が実際に乗ったところでは、「やや混み(ディスプレイ上の「人の数」2つ)」の車両と、「空き多数(同、1つ)」とでは乗客の数がそれなりに異なっていた。

リアルタイムにデータを流すのはシステム的にもコスト的に難しいと考え、リアルタイムのデータの代わりに過去の傾向に基づいた情報を発信している鉄道事業者もいる。ロンドンの金融街・シティと東郊外を結ぶ列車を運行しているc2cというオペレーターは「○○駅何時何分発の列車はこの辺りの車両がすいている」という情報をウェブに公開している。

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