欧州でもスタート、列車「混雑情報」開示の実力 山手線や東急に続くのは英国とドイツだった
同社の場合、ホームには同様の案内が出ないため、「混んでいたら案内を見て、別の車両に移る」ということになる。ボエムさんはテムズリンクの提供情報について「その場で重量差を使って混雑状況を伝えているにとどまる」と説明。他社の動向調査にも余念がないことがうかがえる。
日本では、JR東日本が公開している「山手線トレインネット」で、山手線の混雑状況を知ることができる。これを見ると、1号車から11号車までの車内の混雑率および車内温度が一目でわかるようになっている。スマホのアプリを無料配布しているので、多くの人々がこれを使って、乗車位置を選んでいることだろう。
一方、乗り換え情報等を提供するナビタイムジャパンは今年夏、東急電鉄と共同で田園都市線の混雑度表示をスマホのアプリで配布するサービスを開始した。平日全列車について情報を公開、データの算出は東急電鉄から提供される一部列車の車両別の荷重状況を基にした乗車率データと、ナビタイムが予測する列車ごとの混雑度を組み合わせているとのことだ。ナビタイムはアプリの効用について、「乗車時間を変えることができない場合でも、利用客自身がすいている車両を選択し、快適かつスムーズに乗車できるようになる」と説明している。
英国のシステムが日本で使われる?
ボエムさんは、混雑情報の普及に向け「鉄道各社は、保有している各種の統計数値や運行情報が誰でもアクセスできるようにする“オープンデータ”の試みをもっと進めてほしい」と訴える。「情報プラットフォームを作るに当たり、列車のライブ運行状況の収集は不可欠です。こういったデータがより自由に使えるようになると、混雑情報システム構築へのハードルがずいぶんと低くなると考えています」
運行各社が自社で集めている車両ごとの乗車人数などのデータが開示されれば、それが混雑予測の作成に使える。日本でも今後、混雑緩和のための施策を広げるならば、システム分析に携わる人々が必要な情報にアクセスできるような仕組みを積極的に作り上げていくべきではないだろうか。
「チャンスがあったらぜひ日本の皆さん向けのプラットフォームを作ってみたい」とボエムさんは強い興味を示しており、すでにある日本の会社からシステムの導入について問い合わせが来ているそうだ。
ボエムさんが日本での活動に意欲を示している理由を話してくれた。
「たまたま上野にいたときに地震が襲って……。生まれて初めて体験した地震が、あの東日本大震災だった。あれだけの大きな被害が出たのに、復活を遂げた日本に対し、何らかの貢献ができればいいな、と思っている」
日本だけでなく、英国でもIoTを使った混雑情報の見える化が始まった。「通勤で疲れて仕事にならない」という人々を1人でも減らすため、このようなシステムが世界的に普及するようになるのだろうか。
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