原油価格は1バレル75ドルまで上昇の可能性 今起きているのは水準訂正にすぎない

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また、新たな報道として、サウジでは汚職関与を理由に王族や閣僚、投資家らが拘束されたことが伝えられている。サウジで行われた拘束は、王位継承順位第1位であるムハンマド皇太子への権限集中を進めるための措置と考えられている。関係者は「汚職取り締まりの第1段階にすぎない」としており、さらに「粛清」が進む可能性がある。これも原油価格を支える可能性があるだろう。

米国でも原油在庫が減少、価格は下がりにくい構造に?

一方、米国内では、石油在庫の減少傾向が顕著になっている。その背景には、米国の堅調な輸出が挙げられる。9月の原油輸出量は日量147万3000バレルと、8月の77万2000バレルを大きく上回った。相対的に価格が安いWTI原油を調達して輸出、相対的に価格が高いブレント原油連動の海外市場で売却すれば、収益が上がることが輸出増の背景にあるとみられている。

米国から原油がなくなれば、それはWTI原油の直接的な押し上げ要因になる。この結果、米国内の原油在庫は、原油相場の下落が顕著になり始めた2015年のピークの水準を下回ってきた。

また、興味深いのが米国内の石油掘削リグ(装置)稼働数の伸びの低迷である。最新週のリグ稼働数は前週比8基減の729基と、5月以来の低水準となり、減少幅も2016年5月以来の大きさとなった。安い原油価格では、リグを稼働させられない状況にあることが、かなりはっきりしてきている。

WTI原油が安値圏で低迷すれば、産油量も伸びないことになる。結果的にWTI原油価格は下がりにくいということになる。産油量自体はいまだに日量950万バレル前後と高水準にあるが、輸出で収益を上げるため、無理に生産している可能性もある。また、これまで原油価格が低迷していた時期に、安いコストのリグを稼働させていた可能性があり、その場合には今後は生産コストが上昇することになる。これも、WTI原油を下支えすることになるだろう。

ロイターの調査によると、WTI原油の平均予想価格は、2017年が50.21ドル、2018年が52.50ドルとなっている。しかし、これは筆者から見れば相当低いように感じられる。前回の本欄でも指摘したように、WTI原油は金や銅などとの比較において、相当割安な水準にある。これらの市場との対比で試算したWTI原油の理論値は65ドルから75ドル水準である。WTI原油はようやく60ドルが視野に入ってきたが、まだ安いというのが筆者の考えだ。WTI原油は年末から来年初めにかけて、これまでどおり、65ドルから最大75ドルまでの上昇を想定する。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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