原油価格は1バレル75ドルまで上昇の可能性 今起きているのは水準訂正にすぎない

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サウジアラビアのハリド・ファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は、「原油在庫の圧縮に努めることに重点的に取り組んでいく」と強調しており、価格引き上げに対する本気度が確認できる。またファリハ氏は、「世界的な原油在庫の削減に向け、一段の取り組みが必要」とし、ロシアやウズベキスタン、カザフスタンの各国石油相らと会談し、「協調減産に合意した各国の戦略には、全般的な達成感があるものの、仕事を決してやり終えていないと皆が認識している。在庫減は一層実行する必要がある」と強調している。

さらに、「カザフのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領からも同様の見解をうかがった。アジアのエネルギー相会合で、産油国すべてから聞いた見解も同様だった」とし、マレーシアやエクアドル、ナイジェリア、リビアの当局者らも似たような見方を示したとしている。原油価格の押し上げに向けた産油国の思惑はかなり明確である。原油相場が上向くも当然である。

「ベネズエラのリスク」も価格上昇の材料に

こうした状況から、現行の協調減産については、「延長するかしないか」ではなく、「いつ延長を決めるか」の問題であるといえる。減産延長が11月30日開催のOPEC総会で決まるのか、それとも来年1月に決定されるのか。いずれにしても、減産延長は既定路線であるといってよいだろう。

ちなみに、10月のOPEC加盟国の産油量は前月から日量8万バレル減少し、減産順守率も86%から92%に改善している。一時は減産の順守状況がやや緩んでいたが、監視委員会が順守状況を厳格に管理するようにしてから、徐々に改善されているようだ。

今後、世界の石油在庫が着実に減少していることが確認できれば、相場水準はさらに切り上がるだろう。一方で、ベネズエラの財政危機や、同国国営石油会社PDVSAの資金繰りリスクへの関心も高まっている。これも支援材料になる可能性が高い。そもそも、現在の原油価格の水準では、多くの産油国は単年度の財政収支あるいは経常収支を均衡させることができない。この状況が数年続けば、外貨準備が底をつき、国としても破綻することは避けられない。

これはサウジとて対岸の火事ではない。サウジは現在の苦しい財政状況の改善を図り、将来に向けた投資を拡大させるため、国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)を来年実施する意向にある。有利な条件を勝ち取るためには、原油価格を引き上げることで、アラムコの時価総額を押し上げる必要がある。そう考えると、サウジが原油価格引き上げのための減産をやめるはずがない。

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