日本経済のパースペクティブ 脇田成著
基礎的な経済データとモデルを使って、相互依存関係にある日本経済の見取り図を平明に整理して描き出した概説書。マクロ経済変動をもたらすトレンドとサイクルをベースに、ミクロ構造の動きを加えて、日本経済の過去(主に小泉改革以降)、現在、そして近未来まで、そのポイントをダイナミックにとらえる。同書によれば、日本経済は意外にシステマティックに動いており、この間の動きが経済学の簡単なモデルでかなり説明できる。
真骨頂は「失われた10年」の原因分析。まず日銀の低金利政策が病巣を拡散させ、企業の含み資産の存在や、メインバンク制衰退により弱まった企業ガバナンスが誤った政策対応とともに不良債権処理の先送りを助けた。その「しわよせ」を受けた家計で所得も消費も増えず、拡大は輸出・投資から所得・消費へ波及せず、その結果、成長率の中期トレンドが引き下げられる様子が見事に解析されている。コラムも秀逸。
有斐閣 2625円
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