経済効果150兆円!?五輪がもたらす光と影 経済再興への期待の裏側で懸念も膨らむ

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労働者不足が深刻化

これが実需を伴った価格上昇であれば問題はない。だがすでに一部では、現在販売中のマンションを購入し、五輪直前に高く売り抜けようという投機的な動きも出始めているようだ。局地的なバブルの兆しがないわけではない。

建築コストの上昇も深刻になりつつある。国土交通省のまとめによると、国内の建設業者数は99年度の60万をピークに、12年度は47万まで減少している。一方、東北復興の本格化に老朽インフラの更新が加わり、足元の需要は増加傾向にある。その狭間で人手不足が顕在化しており、今年7月の労働者不足率は2.4%に達している。

マンション分譲コンサルティング会社、トータルブレインによると、3年前には1戸当たり1600万円だったマンション建築費は、現在1850万円まで上昇。ここに五輪関連の需要増が上乗せされることになるわけで、「このままではマンションが建てられなくなる、と漏らすデベロッパーも出てきた」(不動産経済研究所の高橋幸男社長)。

供給サイドのボトルネックに起因する価格上昇は、当然ながら需要に見合ったものではない。「悪い物価の上昇によって金利が上昇すれば、せっかく持ち直し始めた国内景気に水を差しかねない」(都市未来総合研究所の平山重雄・主席研究員)。実需を伴ったものに転換するには、アベノミクスの第3の矢、つまり成長戦略の実現による所得の増加が不可欠だ。

成長戦略において期限目標が定められている項目数は26。このうちの4割に当たる11項目が、20年を目標としている。この年に開催される東京五輪は、いうなればアベノミクスの集大成とも考えられる。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の芳賀沼千里チーフストラテジストは「五輪開催の効果は日本が成長戦略を進めるうえでわかりやすい目標ができたということ。日本はこれまで景気対策として公共投資を実施してきたが、五輪を契機に公共投資の役割が経済の生産性を上げるという本来のものへ見直される可能性もある」と語る。

もちろん、「五輪という名前があれば予算が付きやすくなり、結局は穴を掘っただけ」(第一生命経済研究所の永濱氏)というようなことが起きる危険性も付きまとう。しかし、それでは東日本大震災後の復興予算の二の舞いだ。「五輪予算」の暴走を、いかにして食い止めるか。それが今後7年のもう一つのポイントになるはずだ。

(撮影:ロイター/アフロ 週刊東洋経済2013年9月14日)

堀川 美行 東洋経済 記者

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ほりかわ よしゆき / Yoshiyuki Horikawa

『週刊東洋経済』副編集長

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猪澤 顕明 東洋経済 記者

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いざわ たかあき / Takaaki Izawa

1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、民放テレビ局の記者を経て、2006年に東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などに在籍。2017年に国内のFinTechベンチャーへ移り、経済系Webメディアの編集長として月間PVを就任1年で当初の7倍超に伸ばす。2020年に東洋経済へ復帰、「会社四季報オンライン」編集長に就任。2024年から「東洋経済オンライン」の有料会員ページを担当。

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