それでも日本株は「年内急落」の可能性がある 2018年は日経平均2万3000円も見えてきた
以上、国内における株価判断材料を並べてみたが、結局のところ、企業収益の実態なども含めれば、日本株が年末に向けて大きく下落する、とは言い難い。つまり、冒頭の「年内の日本株の下落シナリオ予想」は、日本以外に起因する。またそうした下落が一巡すれば、日本株は再度(2018年以降は)企業収益の改善を評価した上昇に転じると見込む。
話がややそれるが、最近の国内株価の上昇が、バブルだとかそうでないとかといった、論調を良く目にする。しかし、そもそも日経平均がたかだか2万円を少し超えたところでバブルでもないだろうし(4万円を超えたらわからなくもないが)、バブルかどうかの議論が生じている局面で、バブルはありえない。バブルが発生するのは、誰もバブルだとは微塵も思ってもいない時だ。
米国発の市場波乱を、引き続き警戒する理由
さて、年内の株価調整を引き起こすのは日本国内の要因ではないと言ったが、ではどこの国かと言えば、米国だと考える。
まず米国の市場動向をみると、次の3つの理由で楽観に傾きすぎている。
①米国のS&P500の予想PERをみると、2006年以降のレンジ上限を大きく上にはみ出している。現在案として打ち出されている連邦法人税の引き下げ(35%→20%)が、議会でそのまま満額承認され、それが今すぐ企業収益に反映されたとすると(実際の減税実施は来年以降だが)、予想PERは何とか過去のレンジの中にはいる。ただそれでもレンジ上限に近いし、後述のように、法人減税が現在の案通りに実施される公算は低いと見込んでいる。
②株式以外のリスク資産では、ジャンク債(低格付け債)がかなり買われている。ジャンク債と米国国債の利回り差は、かなりの低水準にあり、市場がデフォルト(債務不履行)リスクを軽視しすぎている。
③VIX指数(恐怖指数)も歴史的な低水準にあり、投資家が、米国株価が急変動することはないだろうと、安心しきっていることが表れている。もはやVIX指数は「慢心指数」と化している。
こうした各市場の慢心、あるいは買われ過ぎの状況が、何によって崩壊するかと考えると、2つ想定される。1つは長期金利の上昇だ。というのは、国債利回りが低く、国債への投資だけでは十分な投資収益があがらないため、投資家が株式やジャンク債に資金を移し、その分だけ両資産が買われ過ぎになっていると考えられるためだ。長期金利が上昇すれば、そうした資金シフトが逆流するだろう。
長期金利の上昇に絡んで、次のような材料が注目される。今週決定されると伝えられている、FRB(米連邦準備理事会)議長の後任人事がどうなるかが、長期金利に影響を与えるかもしれない。本来は、連銀の金融政策は、議長一人で決めるものではないので、誰が議長になるかを騒ぎすぎるべきではない。ただし、仮にタカ派と目されているスタンフォード大学教授のジョン・テイラー氏が後任議長となれば、長期金利が跳ねあがることも否定できない。
一方、イエレン議長の再任、あるいは既に連銀理事であるジェローム・パウエル氏の議長就任が決定され、現路線が継続すると見込まれる展開になることもありうる。ただし、イエレン議長の下の現体制の連銀も、短期金利の引き上げや債券再投資の縮小は、既に進めてきている。ある米国の識者は「イエレンがハト派であるという『勝手なレッテル貼り』で、市場は今の連銀の緩和縮小は大したことがないと錯覚し、株価も長期国債価格もジャンク債価格も、現在の連銀の金融政策をなめきっている。いずれ大きなしっぺ返しが来る」と筆者に語ったが、全く同感だ。
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