M&Aで中小食品救う「異色ベンチャー」の野望 地方メーカー次々買収、事業承継の受け皿に

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日本の食品業界は事業所数、雇用者数の面で最大の産業である一方、そのほとんどが中小・零細企業で構成されている。多くの企業は経営者の高齢化や後継者不足で事業承継にリスクを抱えており、同社はここに商機を見いだしたのだ。

産業革新機構や日本たばこ産業(JT)などからの出資を経て順調に業績を拡大。2016年に東証マザーズに上場すると、今年3月にはトントン拍子で東証1部への上場市場変更を果たした。10月13日に業績の上方修正を発表したばかりで、2017年度は売上高196億円、営業利益6.4億円を目指す。

買収企業の弱みを補い合う

「メディアの取材や投資家からの問い合わせが増えてきた」(吉村CEO)。成長の秘訣は、買収した各社のノウハウを活用し、文字どおり互いの「弱みを補い合う」ところにある。

業務用の冷凍食品を手掛ける愛媛県の企業、オーブンは、競争激化で売り上げが低迷、デリバティブ取引での損失が追い打ちとなり2012年に倒産、民事再生法を申請した。同社を2013年に買収したヨシムラ・フード・HDは、楽陽食品出身でグループ全体の生産部門を統括する深谷英吾氏を送り込んだ。

「オーブンの社員70人と面談した」と語る深谷氏は、同社の問題点を洗い出し、“楽陽流”の生産管理方法を指導。吉村CEOに頼み込んで最新の製造設備を導入し、業績回復への道筋を描いた。

営業面でも、売り上げデータ管理の方法をグループ全体の営業部門の責任者が指導した。ヨシムラ・フード・HDは、買収を実施する前のデューデリジェンス(価値査定)を行う部隊と、PMI(買収後の統合作業)を実施する部隊が同一であるため、「買収完了から業績向上に至る過程がスムーズだ」(吉村CEO)

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