アマゾンは、何でも買える「巨大酒屋」だった 大手メーカーもすり寄る販売チャネルに

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メーカー側も手応えを感じているようだ。ボタンを導入したサッポロビールの「黒ラベル」缶は、2017年1~9月のアマゾンでの販売数が、前年同期比約2.1倍に伸びた。またキリンビールのチューハイカテゴリーにおいては、実店舗での販売は「本搾り」より「氷結」のほうが多いものの、アマゾンの酒類総合ランキングでは、ボタンを導入した本搾りが、氷結を上回る逆転現象も起きた。

キリンビールが展開する「本搾り」のダッシュボタン。Wifiに接続させれば、白い部分を押すだけで注文が完了する(記者撮影)

つねに消費者の目に触れさせるため、メーカーは実店舗で他社より多くの棚を占有しようと奮闘している。だが、スペースの限られた棚には陳列しきれない製品も多い。中小メーカーの苦労はなおさらだ。

そんなメーカーにとって、アマゾンでの販売には「ニッチな製品でもロイヤルティの高い消費者に直接訴求できる」(サッポロビール)というメリットがある。加えて、ダッシュボタンのように繰り返しの注文を簡便化するツールがあれば、他社製品に“浮気”される心配も減る。

お酒を買うアマゾンユーザーはまだ少数派

アマゾンバーの開店イベントには、俳優の別所哲也さん、女優の三船美佳さんが登場した。右端にいるのは、アマゾンの前田宏・消費財事業本部長。左端は鈴木亘・酒類事業部長(記者撮影)

急速に巨大化する”酒屋アマゾン”だが、書籍や家電など売れ筋のカテゴリーに比べれば、お酒を買うユーザーはごく少数派だ。「ECでお酒を買うという習慣自体がまだ根付いていない」(アマゾン消費財事業本部の鈴木亘・酒類事業部長)。アマゾンにこれだけの品ぞろえがあるということの認知も、まだ広がっていない。

今回アマゾンバーでは、注文用レシートを発券する際、アマゾンの購入ページに飛べるQRコードを印刷したレシートも発行。店内で過ごす間にこれをスマートフォンで読み込んでもらい、アマゾン上で酒類のページを回遊し、購入してもらうきっかけを作りたい考えだ。

「お酒の販売には産地や製法についての情報提供も重要。特設ページを作ったり、動画を使ったりと、ネットならではの工夫ができる」(前田本部長)。今後も国内外のメーカーを巻き込んだ、”酒屋アマゾン”の試行錯誤が続きそうだ。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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