ホンダの新型スーパーカブは何が進化したか 世界販売1億台の名車も環境規制対応に苦慮
新型のスーパーカブはデザインとエンジンが大きく変化した。2012年にモデルチェンジしたときに、グローバルモデル仕様で四角くなったランプが丸型に戻り、初代や2代目を彷彿させる形に仕上がったことで、原点に立ち返った。式典に登場した世界各国向けのモデルには比較的ゴツゴツしたものが多い中、日本向けモデルは、日本人好みの丸さやレトロさが際立っている。
スーパーカブはその耐久性から商用利用が多く、4輪でいう小型トラックのような存在だ。国内販売の約3分の1は日本郵政への商用販売が占め、新聞や飲食店の出前の配達で使われるバイクとしても定番だ。新型スーパーカブ開発責任者の亀水二己範氏は、「プロの人々が安心して使えるよう、デリバリー車としての魅力を高めた」と語る。坂道でもグイグイ登れるような性能を最優先に、エンジン部品は約半分を刷新した。
新エンジンで排ガス規制強化に対応
しかし、今回大きな壁となったのが、今年9月に強化された排ガス規制だ。欧州の規制に合わせて、一酸化炭素などの排出量を従来の6割程度にするよう国の基準が改められた。排ガス規制を満たしつつ、卵1個分の排気量しかないエンジンの性能を落とさないのは至難の業だ。今回は、キャタライザーと呼ばれる排ガス浄化装置を1つから2つに増やし、燃料噴射のプログラムも見直した。
結果として、燃費は2~4%ほど悪くなった。それでも、スーパーカブ50はガソリン1リットル当たり106キロメートル(国土交通省届出値)、スーパーカブ110は62キロメートル(同)走るのだから、燃費のよさという商品性は損なわれていない。一方で、ヘッドランプには初めてLED(発光ダイオード)を採用した。
こうした排ガス規制への対応や装備の充実により、価格は約4万円上がり23万2200円(税込み)からとなる。価格は高くなったが、メンテナンスの手間を減らし、ユーザーの利便性を高めることにも努めている。従来は煩雑な作業が必要だったエンジンオイルやフィルターの交換も、機構を見直すことで簡単にできるようにした。
ロングセラーのスーパーカブの一新で国内の2輪販売を活性化したいところだが、足元の環境は厳しい。「原付一種」と呼ばれる、50ccの低排気量バイクは、世界中でも日本でしか販売されていない「ガラパゴス」車種だ。2016年の販売台数は16万2000台あまりと2輪全体の半分近くを占めるが、2015年に比べ16.4%の減少となった。
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