三菱自、ゴーン流で拡大路線に転換できるか 世界販売を3年間で4割増、強気計画の真実味

拡大
縮小

これまで抑制してきた投資も一気に拡大させる。2019年度の設備投資は2016年度の6割増となる年間1370億円で売上高対比5.5%に引き上げる。研究開発費も5割増の1330億円とするなど、設備投資と研究開発費は3年間で計6000億円以上に増額する予定だ。

一方、コスト削減も徹底する。日産とは車のコストの6~7割を占める部品の共同購買を本格化。また、利益重視を目的に月次の損益管理手法を導入し、業績は回復傾向にある。経営陣には日産からの役員が多数送り込まれており、面談も頻繁に行われている。三菱幹部は「日産という新たなベンチマーク(指標)ができ、今まで気づけないことに気づけた。ロジックに基づき、いつどこで何を販売するかが明確になった」と話す。組織や人事も年功序列を打破し、日産と同じ成果報酬型に移行してきている。

模範としてきた日産が窮地に

だが、皮肉にも三菱が模範としてきた日産は自らの不祥事で今、窮地に立たされている。日産では無資格の検査員が完成検査をしていた問題が発覚し、くしくも10月2日の新型EV「リーフ」発売日に大量のリコール(回収・無償修理)を発表。その台数は116万台に及んでいる。現在、第三者を含む調査チームが調べており、10月末をメドに事実関係と再発防止策を国土交通省に報告する予定だ。日産は三菱より前に発表する予定だった中期経営計画の発表日も延期した。

東京モーターショー2017に三菱自動車が出品するコンセプトカー『MITSUBISHI e-EVOLUTION CONCEPT』。商品の魅力で新たな顧客を開拓できるかが同社の成長を左右する(写真:三菱自動車)

三菱は日産の問題はアライアンスに影響がないとの見方を示しているが、はたしてどうか。三菱もまだ消費者の信頼回復ができたとはいえない。益子社長は「アライアンスメンバーとなったのは大きな前進だが、それだけでは十分でない。他力本願ではダメだ。これからも立ち止まらず考えていきたい」と話す。有言実行を貫けるか、正念場の3年間となる。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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