遺族年金はちゃんと申請しないともらえない 自分や親が亡くなったら年金はどうなるのか

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では高齢の夫が死亡した場合や、シングルの人が死亡した場合はどうなるでしょうか? 高齢の夫の死亡時には妻などに遺族年金が支給されますし、シングルの人が亡くなった場合も、その親などに遺族年金が支給される可能性があります。

ただし、遺族年金は申請しなければ支給されません。もらえることを知らなかったり、手続きをせずに放置しておくと、1円ももらえないのです。もらいそこねたりしないよう、しっかり理解してください。ここからはいくつかのケースを見ていきましょう。

夫の厚生年金の一部は、妻に支給される

元会社員の夫が70歳で死亡、70歳の妻が残されたとしましょう。妻は「遺族厚生年金」を受け取ることができ、金額は夫が受け取っていた老齢厚生年金の4分の3の額です。再婚しないかぎり、生涯、受け取ることができます。会社員だった人の年金は老齢基礎年金(国民年金部分)と老齢厚生年金(厚生年金部分)の2階建てで、遺族厚生年金は、厚生年金部分(国民年金部分を除く)の4分の3です。

具体的な金額が気になるところですが、年金を受給している人には、毎年、「ねんきん定期便」が届いており、そこに厚生年金の額が記載されています。高齢の親御さんを抱えている読者の方は、「ねんきん定期便」を見せてもらうといいでしょう。

仮に父親が厚生年金を10万円、母親が自身の年金として8万円を受給している場合、父親の死亡後は7万5000円+8万円で、15万5000円の年金が受け取れる、というわけです。

もう1つ、知っておきたいのが、「中高齢寡婦加算」です。前述のとおり、子どもがいると遺族基礎年金がもらえますが、「子どもがいない妻で夫の死亡時に40歳以上65歳未満」または、「40歳時点で遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていたが、子が18歳になって遺族基礎年金が終了した場合」は、中高齢寡婦加算も支給されます。妻が40歳から65歳までで、金額は年額58万4500円(平成29年度)です。

さらに65歳を過ぎると「経過的寡婦加算」も支給されます。金額は妻の年齢に応じて異なり、2万~58万円程度。昭和31年4月2日以降に生まれた妻には経過的寡婦加算はありません。

では、年金の支給開始を迎えずに、夫が死亡した場合はどうなるでしょうか。子どもがいれば冒頭で述べたように遺族基礎年金と遺族厚生年金、子どもがいない場合は、妻が遺族厚生年金と中高齢寡婦加算を受け取ることができます。妻が働いていても、年収が850万円未満なら支給されます。ただし、妻が30歳未満で子どもがいない場合は、遺族厚生年金が支給されるのは5年間のみです。「30歳未満で子どもがいないなら自立できますよね」、という意味が込められているようです。

遺族厚生年金の支給額は、夫が将来受け取る予定だった厚生年金の4分の3の額です。厚生年金の額は収入や厚生年金保険への加入期間によって異なります。若くして亡くなった場合は加入期間が短く、額も小さいと思いがちですが、加入期間が25年未満の場合は、25年間保険料を支払い続けたとみなして遺族年金の額が計算されます。10年しか加入していなくても、25年加入したという前提で遺族厚生年金が支給されるのです。若くして亡くなるのは悲しいですが、遺族の生活を支える意味ではありがたい制度といえるでしょう。

また、シングルの方が亡くなった場合はどうなるでしょうか。亡くなった方が55歳以上の父母または55歳以上の祖父母に経済的支援をしていた場合、父母などに遺族厚生年金が支給されます。支給されるのは父母または祖父母(受給者)が60歳になってからで、支給額は厚生年金の4分の3です。

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