40歳無職男性と結婚・出産した女性の「計算」 出産のリミットを前にしての決断

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震災があり、彼とも別れた年の暮れ。会社の忘年会で多忙だった1年を同僚とねぎらい合った。当時、智美さんは37歳。「40歳までに子どもが欲しい」という気持ちが急速に高まった。そして、初めての婚活を決意する。何をどうすればいいのかわからなかったので、行きつけの飲み屋のマスターが「出会い系サイトで彼女を見つけた」と自慢しているのを聞き、同じサイト(有料の老舗婚活サイト)に登録してみることにした。

そのサイトで3人目に会ったのが、現在の夫である雅史さん(仮名、42歳)だ。当時、雅史さんは36歳。早ければ管理職になるような年齢にもかかわらず、難関国家資格の勉強をするために会社を辞めるつもりだと告白。智美さんはあきれ果てた。

「ないな、と思いました。今さら勉強を理由に無職になる人と結婚前提に付き合うわけがありません」

一方で、雅史さんに話しやすさは感じた智美さん。ほかの男性との出会いも模索しつつ、雅史さんと食事に行くことは続けた。ある日、すでに職を離れていた雅史さんから「付き合いたい」と告白され、智美さんは承諾する。

「恋人が誰もいないよりかはこの人でいいかな、という気持ちです。正直言って、私はその後も彼に内緒でネット婚活を続けていました」

「40歳までに子ども」という念願をかなえたい

そのまま1年が経過し、智美さんは39歳になった。今すぐ結婚して妊娠しなければ「40歳までに子ども」という念願は達成できない。智美さんは「今の時点で一緒に子作りと子育てをしてくれるのは彼しかいない」と覚悟を決める。そして、雅史さんと2人で出掛けた東京・お台場でプロポーズをする。夜に観覧車に乗っているときだった。

「大事な話があるの。私、結婚したい」

夜の観覧車内という逃げ場がない状況だが、マイペースな雅史さんは「考えてみる」と保留の返事。2カ月後に、2つの条件付きでOKを出した。自分は国家試験に合格して夢の職業に就くことをあきらめていない、子どもが作れる体なのかどうかわからないので2人とも病院で事前に検査する、の2つだ。

智美さんはすぐに同意して、病院の検査も受けた。2人とも無事にクリアし、お互いの親にも紹介した。智美さんの親は雅史さんが働いていないことに不安を感じたようだが、「一生結婚しないよりは1回ぐらいはしておいたほうがいい」と消極的に賛同。雅史さんの親からは「息子と結婚してくれてありがとう。正直、あきらめていた」とひたすら感謝された。

実家暮らしで勉強を続けていた雅史さん。収入はアルバイト代の月12万円のみだ。智美さんと大きな部屋を借り直すこともできず、結婚してからの2年間は別居婚だった。

子作りが最大の目的で結婚した智美さんは、雅史さんが試験に合格していずれ同居する日まで待つことはできない。すぐに「タイミング法」を実施。排卵日を事前に雅史さんに伝えておき、その日は1人暮らしの部屋に泊まりに来てもらったのだ。幸いにも結婚2カ月後には妊娠がわかる。そのとき41歳。娘を出産した去年の春には42歳になっていた。2年遅れで無事に目標を達成したのだ。

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