「将来に興味がない」高校生に語るべき"言葉" 夢ばかり語っても意味がない
さらに具体的に将来の仕事をイメージしてもらうために、筆者は授業の最後に自分自身の体験談や失敗談を話しています。給料のよさだけで会社を選んだら体を壊したこと、正社員を辞めた後にフリーターをしていたら貯金が130円になったこと、20代のうちに学生・正社員・派遣社員・フリーターを全部経験したことなど。カードゲームの説明以上に生徒たちが真剣に聞いてくれるのは私の失敗談です。
働くことがイメージしにくく、若年無業や貧困のリスクが高い生徒たちにとっては、働く大人のちょっとした日常や失敗談さえも新鮮に聞こえるのだと思います。だからこそ、この記事を読んでいる皆さんにもぜひ、自身の体験談、失敗談を若者たちに語ってほしいと思うのです。
高校生に話すことは、ビジネスにおいてもメリットが
高校生の実態の話から少し話がそれますが、高校生に授業をするという貴重な経験を多くのビジネスパーソンの方々にもしていただきたいと感じています。
筆者は高校生の授業だけでなく、企業向けの研修等にも年間100件近く登壇していますが、いちばん難しいのは高校生向けの授業だと感じています。企業向け研修であれば講師は「先生」と認識されて、受講者側も素直に話を聞いてくれますし、大きな混乱はめったに起こりません。一方、高校生の授業では、生徒が講師のことを「先生」と認識したとしても、「先生が話しているから静かに聞く」習慣がないことも多々あります。権威ある資格や実績を持っている方でも高校生はそのすごさがわからないので「すごい人の話だから聞こう」とはなりません。高校生が話を聞くかどうかの判断基準は「おもしろくて、わかりやすい」ことです。
仕事のことや将来のリスクといった、ともすれば堅苦しく小難しくなる内容をおもしろく、わかりやすく話すには高校生がおもしろいと思うポイントを知り、高校生にもわかりやすいというのはどんなレベルかを知る必要があります。しかも、おもしろいポイントやわかりやすいと思うポイントは学校やクラス、生徒によってさまざまです。相手の興味や理解度を把握して情報を伝えるのはビジネスの基本でもあり、コミュニケーション能力の向上にもなると私は思っています。
さらに、高校生の反応は素直です。おもしろければどんどんこちらの話にのめり込んできますし、授業が終わっても将来の仕事のことを話してくれます。逆につまらなければ、おしゃべりをはじめるか、寝るか、教室を出ていきます。自分が「おもしろくて、わかりやすい」伝え方をできたのかどうか、すぐにわかってしまいます。
会社の部下や就活生であれば、おもしろくないと思っていても態度には出さないかもしれませんが、高校生相手ではそうはいきません。多様性のある社会が求められる中で、立場も年齢も違う人たちにメッセージを残す力を磨くことは、多くのビジネスの場面でも求められる能力だと思います。
これからの日本を担う若者たちのために、実際に高校生たちと接し、サポートする大人が1人でも多く増えてくれることを願っています。
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