トランプ周辺が危惧する「第3次大戦」の悪夢 金正恩との挑発の応酬は衝突を招きかねない

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軍事衝突に至らないようにするための外交努力を、国務長官のティラーソン氏らが行っている現状において、トランプ氏は対話路線に否定的な言動を続けている。トランプ氏と、「ティラーソン国務長官・マティス国防長官・ケリー首席補佐官」との間の緊張関係も伝えられている。

トランプ氏は10月11日、ホワイトハウスの記者団に、「私は、北朝鮮への姿勢について、ほかの人たちとは少し違う態度をとっている。私は皆の意見を聞くが、最後に重要なのは私の姿勢だ(I think I have a little bit different attitude on North Korea than other people might have. And I listen to everybody but ultimately my attitude is the one that matters)」と語り、高官たちとの意見の相違を認めるとともに、重要なのは自分の考えだ、と強調した。

そして、トランプ氏は、イランとの核合意や対イラン戦略についても、側近らの反対を押し切って無効にするかどうかや、戦略をどう修正するのかを検討している最中だ。

日本では、今回の解散総選挙のタイミングについて、「年末から年明けにかけては米国の軍事行動の可能性が高まり、解散どころではなくなる。小康状態のいまだからこそ、首相は解散を決断したのだ」という官邸発とみられる情報がメディアに流布されている。

しかし、米朝間の緊張はすでに高く、偶発的な衝突はいつでも起こりかねない状況だ。そして現在は、韓国や日本に大きな被害が及びかねない軍事衝突を防ぐため、外交努力を行うのに非常に重要な時期でもある。その大切な時期に、日本は総選挙をやっている。

元高官「トランプ大統領は戦争を始めるのではないか」

『乱流のホワイトハウス トランプvs.オバマ』(岩波書店)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

オバマ政権で国家安全保障を担当していた元高官は今春、「トランプ大統領が、戦争を始めるのではないかと心配だ」と私に語っていた。元高官の懸念は、ベトナム戦争よりも長くなったアフガニスタンでの戦争で米軍はすでに疲弊しており、米軍や米社会は新たな戦争に耐えられないだろう、というものだった。

米国がいま、戦争する可能性が高いのは、北朝鮮との間であることは明らかだ。私はもちろん、危機が高まる米朝対立のメインシナリオは、米朝間の直接対話による危機回避だと思う。ただ、コーカー氏を含めた米国のインサイダーたちが、戦争に至る危険性に言及するなかで、万が一、戦争になった場合に、日本にどの程度の被害が及ぶのか、といった冷静な議論が日本国内ではなされていないように感じる。

そうした議論がないまま、「圧力をかける」ことばかりが語られ、日本に被害が及ばないようにするための、対話や外交努力についての議論が日本国内で乏しいことは、非常に気がかりだ。

尾形 聡彦 朝日新聞オピニオン編集部次長兼機動特派員

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おがた としひこ / Toshihiko Ogata

1993年朝日新聞入社。秋田、千葉支局を経て、経済部記者として財務省、鉄鋼業界、証券業界、流通業界などを担当。2000~2001年に米スタンフォード大学客員研究員。2002~2005年に米サンノゼ特派員としてシリコンバレーを取材した。2008~2009年にロンドン特派員として欧州経済、2009~2012年はワシントン特派員としてホワイトハウスや米財務省、米連邦準備制度理事会(FRB)を取材。日本の財務省・政策キャップ、経済部次長、国際報道部次長を経て、2015年から機動特派員として、米ホワイトハウスや日本政府を取材している。2016年からはオピニオン編集部次長を兼務する。7月下旬に、2つの米政権や大統領弾劾の行方を描いた『乱流のホワイトハウス トランプvs.オバマ』(岩波書店)を刊行した。ツイッターは@ToshihikoOgata

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