トランプ周辺が危惧する「第3次大戦」の悪夢 金正恩との挑発の応酬は衝突を招きかねない
ホワイトハウス内の混乱については、私自身、政権に近い関係者から、「マティス国防長官や、ケリー首席補佐官らが、トランプ大統領を押さえ込んでいる」という話を聞いていた。コーカー上院議員の発言は、私が聞いていた関係者の話にも沿ったものといえる。が、ティラーソン国務長官らと日常的に連携している究極のインサイダーである共和党の重鎮、コーカー氏の危機感がここまで強いことに、私は驚いた。
ホワイトハウスの高官たちは、トランプ氏をどの程度コントロールできているのか。
政権に近い関係者は私に、「50%は制御できるが、50%は制御できない」とも最近語っていた。そのコントロールできていない部分で、トランプ氏が挑発的な言動を繰り返し、北朝鮮との裏交渉も行き詰まっているのが、最近の状況のように見える。
トランプ氏の最近の言動で印象的なのは、9月19日の国連総会での演説で、トランプ氏が、金正恩氏を「ロケットマン」と呼び、北朝鮮を「完全に破壊する」可能性に言及したことだった。
「ロケットマン」や「完全に破壊」は原稿になかった
この内幕について、ロサンゼルス・タイムズ紙は、「『ロケットマン』や『完全に破壊』という言葉は事前の原稿にはなく、むしろ米高官らは『金正恩氏を個人攻撃すれば、交渉が閉ざされるため、そうした言動は控えるように』と伝えていたにもかかわらず、トランプ氏がそう言ってしまった」と報じた。米メディアによると、その大統領の発言の際、ケリー首席補佐官は頭を抱えていたという。
コーカー氏が、今回あえて、オン・ザ・レコードのインタビューで、トランプ氏を批判したのは、こうした経緯が背景にあり、対話路線の可能性をどんどん小さくしている米国の現状に警鐘を鳴らす狙いがあるのだろう、と私は感じる。来年の選挙に出ないだけに、率直なモノ言いに転じたという側面もあるだろうが、ニューヨーク・タイムズが公開しているインタビューの詳細なやりとりや音声からは、米国の将来を憂慮するコーカー氏の強い気持ちが伝わってくる。
拙著『乱流のホワイトハウス トランプvs.オバマ』でも触れたが、トランプ氏が大統領らしくない言動で、金正恩氏と挑発を繰り返す現状は、互いの計算違いによって偶発的な軍事衝突を招きかねず、極めて危険だと私はかねて感じている。
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