ユニクロ、最高益達成でも安心できない理由 海外の成長が続く一方、国内事業は課題山積

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国内ユニクロ事業は冬物商品の伸び悩みや在庫処分の値下げで減益に(記者撮影)

一方、海外と比べると国内ユニクロの業績は物足りない結果だった。売上収益は8107億円(前期比1.4%増)と微増だったが、営業利益は959億円(同6.4%減)に落ち込んだ。

暖冬の影響で冬物商品の売り上げが伸びなかったことに加え、単価の低いインナーやカットソーなどの売り上げ比率が高まったことや夏の在庫処分での値下げが響いた。

国内事業について、柳井会長は「経費の削減を大幅にやっていかないといけない」と危機感をあらわにする。人件費や物流費の上昇が続き、多数の実店舗を展開するユニクロでは人材配置の適正化や配送の効率化が急務となっている。

日本企業だから日本で稼ぎたい

もう一つの課題が柳井会長肝いりで始動した「有明プロジェクト」の軌道化だ。このプロジェクトの狙いは、商品企画と物流を扱う部門が密に情報を共有し、商品開発のスピードを高めることにある。

東京・江東区有明の次世代物流倉庫(編集部撮影)

今年2月、首都圏向け商品の物流拠点・有明倉庫の最上階にある5000坪のオフィスに、1000人の社員が六本木から移転。店舗や顧客ごとに、どのような商品が購買されているかなどといった情報を把握できる仕組みを構築し、消費者のニーズを即座に商品開発に反映できるようにする。

「この業界は、3分の2くらい無駄な商品を作っている。必要な商品が70~80%となるように、お客様や世界のトレンドをつかんで、必要な商品を必要な量だけ企画して生産して売っていく。基本は、無駄なモノを作らない、運ばない、売らないということだ」。柳井会長はそう強調する。

今2018年8月期の業績について、会社側は売上収益2兆0500億円、営業利益2000億円とそれぞれ過去最高を見込む。アパレル各社が国内需要の開拓に苦戦している中、柳井会長は「日本企業なので日本で稼がないことには始まらない。当然だが海外以上に日本では稼いでいきたい」と強気の構えを崩さない。有明プロジェクトの成否が国内回復のカギとなりそうだ。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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