日本の”ナンバーワン”弁護士は誰だ!? 知られざる”番号登録”の歴史

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年功序列ではなく司法修習期順だから、40歳の62期は、35歳の58期を先輩として対応するのが礼儀となる。サラリーマンとして事業会社に長年勤務し、定年退職後、もしくは早期退職して司法試験に挑戦し、合格したという人は昔からまれにだが一定数いるので、こういう人は登録時の年齢は60歳を超えるが、それでも弁護士としては1年生であることをわきまえ、自分の子供より若い2年生、3年生をちゃんと先輩として扱う。

弁護士同士は互いに互いの能力を値踏みし合うので、腹の中でどう思っているかはそれぞれだが、とりあえず表面的にはこのルールはかなりきちんと守られている。

初対面の弁護士同士では、多くの場合、最初に修習期を確認し合うので、「センセイ何期ですか」「僕? 45期です。センセイは?」「僕は合格までに時間がかかっちゃって、年は行ってるんですが49期ですから、センセイは先輩ですねえ」などというやりとりが当たり前に取り交わされる。

検事や裁判官も含め、司法修習の同期はひとつ釜のメシを食ったもの同士という連帯感が強い。合格者数が増え始めてからの世代はクラスが違うと顔も名前もわからない、ということも起きるようになったが、合格者が年間500人だった時代の大半は司法修習期間も2年間(現在は1年間)だったので、より同期同士の連帯感は強い。お互いの動静にも関心を払い合う。

民事事件なら相手方の弁護士と担当裁判官、刑事なら検事と担当裁判官の修習期チェックは初動動作のひとつ。自分の知り合いの中に同期がいれば、クセや実績、性格などを“取材”するのである。

最高裁判事経験者の旧番号復帰

だからなのか、登録番号が何番台かということも、弁護士にとっては極めて重要だ。今や1万番台未満の4ケタの番号を持っている弁護士は、約50年前の17期、18期あたりの人たちまでなので、極めて貴重な存在になっている。(もっとも、この4ケタの登録番号の弁護士の中に、依頼人の資産を横領した挙げ句に懲戒を受ける弁護士がいるのは事実で、この件は次回以降で取り上げる。)

弁護士は弁護士登録を維持している限り、弁護士会費を支払わなければならないので、留学などで一時的に登録を抹消し、帰国後に再登録をするということがあるのだが、再登録の際にはもはや当初の番号はもらえず、1年生と同じいちばん若い番号をつけられてしまう。

裁判官や検事が退官して弁護士登録をする際も、いくら司法修習期が古くてもいちばん新しい番号が付与される。

かつてこのルールは、弁護士から最高裁裁判官になり、退官後に弁護士に戻る人たちという、ある意味で弁護士として最高の出世を果たした人たちにまで厳格に適用されていた。

以下の表は、現在弁護士登録がある、最高裁判事経験者の任官前と退官後の登録番号を比較したものだ。これ以前の最高裁判事経験者で退官後に弁護士に復帰した人は、死亡や引退などにより、現在では弁護士登録が抹消されているので、掲載対象から除外した。

元原利文氏までは、復帰時点の最新番号を付与されていたのに、河合伸一氏以降の人たちが退官後にも任官前の旧番号を使えているのは、2002年6月に河合氏の後任として最高裁判事になった滝井繁男氏が大運動を展開し、2002年6月退官者以降は旧番号に復帰できるようにしたからだ。河合氏は滝井氏のおかげで貴重な4ケタ番号に復帰できたと言っていい。

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