原発事故から2年半。「避難」に奪われた命 東京オリンピックと終わらぬ悲劇

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2020年東京オリンピックが決定した。オリンピック憲章は「オリンピズムの目的は、人間の尊厳を保つことに重きを置く平和な社会の確立を奨励することにある」とし、オリンピック精神は「いかなる差別をも伴うことなく、友情、連帯、フェアプレーの精神をもって相互に理解しあう」としている。私たちは、このオリンピックの理念を胸に心からの笑顔で世界の人たちを迎えなければならない。オリンピックまであと7年――。
汚染水問題、除染、中間貯蔵施設、避難、廃炉政策など、福島を取り巻く問題は山積されている。長引く避難生活にストレスを感じ、仮設住宅で暮らす人たちはまだまだ多い。
避難した福島原発周辺の介護施設の高齢者たちの問題も例外ではない。
福島原発付近の介護施設の避難状況をルポし、現場から導きだされた避難の教訓を伝える書籍『避難弱者』(相川祐里奈著・東洋経済新報社)の筆者が、介護施設の避難の現実と課題をレポートする。
サンライトおおくまは、巨大地震発生により屋外へ退避。 雪が降るなど気温が低かった(サンライトおおくま敷地内にて。2011年3月11日午後3時20分撮影)

地震・津波よりも多い「震災関連死」

復興庁は今年3月末、避難や長引く避難生活などで命を落とした「震災関連死」の認定者数が1383人だと公表した。その後も増え続けており、8月末現在までの福島県内の震災関連死者数は1539人で、地震や津波による直接死者数の1599人に迫っているという事実も、東京オリンピック開催のニュースの影で報道された。申請中が109人。確実に直接死者数を上回る見込みだという。震災関連死の大半は60歳以上の高齢者だ。

特別養護老人ホームや養護老人ホームへの取材によると、2回以上もしくは県外への避難を経験した11の高齢者福祉施設では、平均して例年の2.4倍の利用者が1年以内に亡くなっている。

原発事故をはじめとした巨大災害が起こった際に、自力では避難できない高齢者たちをどう安全に避難させるのか。3.11の教訓は2年半後の今に生かされているのだろうか?

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