しかし、クシュナー氏は政治・外交面では素人であり、経験が浅い。対外交渉術を思う存分に駆使しているトランプ氏に比べて、若い割には予想外に伸びしろの伸びがない。
むしろ、トランプ大統領を補佐し、その地位をより堅固に守り、同時に、イヴァンカのオーラを豊潤にすることを、今は最優先にすべきだ。ティラーソン氏との対立では、政治的なエゴも垣間見える。まったく無駄な対立と言っていい。
トランプ政権崩壊を防ぐことができるのは?
米メディアの一部には、ティラーソン氏の後釜として、マイク・ポンペオ中央情報局(CIA)長官を据える案もあると報じている。こうした米メディアによる観測情報には、ティラーソン氏が記者会見で述べたように、トランプ政権を分断しようとする思惑が背後にあると言えなくもない。
すでにトランプ政権幹部は相次ぎ退任している。つい最近も公務でチャーター機を利用していたトム・プライス保険福祉長官が引責辞任した。後任はまだ決まっていない。ラインス・プリーバス氏のあと首席補佐官に任命されたジョン・ケリー前国土安全保障長官のポストも空席のままだ。
国務省でも次官・局長級ポストの多くが空席となっている。きめ細かい外交に支障を来している。ここでティラーソン氏が辞任しようものなら、そのインパクトはトランプ政権の崩壊につながりかねない。
なにしろ国務長官というポストは、副大統領(上院議長)、下院議長、上院仮議長に次ぐ、たとえて言えば、「王位」継承順位4番目の重要ポストである。歴代の国務長官はハリウッドとのつながりなど、派手な振る舞いが目立ったが、ティラーソン氏はそんな派手な世界とは無縁であり、むしろ仕事人としての地味さが目立つ。
同氏は、米連邦政府の最重要政策である国家安全保障について、外交第一という国務長官の立場を貫いている。トランプ大統領に批判されても、忠実に黙々とその職責を果たしている。トランプ大統領が最も信頼し、軍事全般に通じ、仕事一本やりのマティス国防長官とも相性がいい。
トランプ政権を支えるに当たって、この2人は大統領という燦然(さんぜん)と輝く「光」を曇らせないという意味で、地味だが、大地に足がついている双璧と言っていい。絶対に欠かせない存在だ。
そんなティラーソン氏について、元政府高官は「彼には手助けがない。チームもなく、親しい仲間もなく、誰も雇っていない。それは一種の『死のスパイラル』だ」という。もし、そうだとすれば、ティラーソン国務長官を救い、守ることができるのは、トランプ大統領をおいてほかにいない。
結局、トランプ政権の崩壊を防ぐことができるのは、トランプ大統領自身にほかならないのだ。
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