親の死亡後、手続き次第でお金が戻ってくる 供養のつもりでやれば、数十万円以上にも

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個人事業主や、収入が一定の額を超えていた人が亡くなった場合は、家族が故人に代わって確定申告(準確定申告)を行う必要があります。

収入が公的年金だけでも一定の額を超えると所得税がかかりますが、年金から源泉控除されているので、確定申告して納税する義務はありません。

だからといって、申告しないのでは損になる可能性があります。介護保険料や後期高齢者医療保険料などの社会保険料は所得から引くことができますし、みなさんも年末調整で経験していると思いますが、生命保険料、地震保険料なども所得から控除でき、所得が減る分、税金が安くなります。準確定申告をして各種の控除を受けることで、源泉徴収された税金が戻ってくる、というわけです。

戻ってくるおカネは、まだまだあります。1年間(1月~年末)の医療費が年間10万円または所得の5%以上かかった場合は「医療費控除」が受けられ、自己負担した医療費から10万円または所得の5%を引いた額を所得から差し引くことができます。たとえば社会保険料の控除と医療費控除で所得が30万円減った場合、税率20%の人なら単純計算で30万円×20%=6万円が戻ってきます。大きいですよね。

「未払い分の年金」は遺族が受け取れる

最後は年金のお話です。亡くなった人の年金についても、厚生年金では亡くなってから10日以内、国民年金では12日以内に「年金受給権者死亡届」を提出する必要があります。

亡くなれば年金の支給は止まりますが、実はここでも、もらえるおカネがあります。年金は偶数月に過去2カ月の分が振り込まれるしくみで、たとえば8月に支給されるのは6月、7月の分。9月に亡くなった場合、8月分と9月分の一部は受給する権利があり、それが遺族に支給されるのです。これを「未支給年金給付」といいます。年金の平均受給額は20万円程度。1カ月半分なら30万円です。

支給の対象となるのは、故人と生計を一にしていた遺族で、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、3親等以内の親族の順です。生計を一にしていた、というのは同居に限らず、定期的に仕送りをしていた、してもらっていた、という場合でも大丈夫です。「未支給年金給付」も、「未支給年金・保険給付」という手続きが必要ですから、もれなく手続きをして、しっかり受け取ってください。使い道はもちろんいろいろですが、受け取ったおカネで、故人を偲ぶために使ったりすればきっと喜んでくれるはずです。

井戸 美枝 ファイナンシャルプランナー

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いど みえ / Mie Ido

神戸市生まれ。 関西と東京に事務所を持ち、年50回以上搭乗するフリークエントフライヤー。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。『世界一やさしい年金の本』(東洋経済新報社)、『知らないと損をする国からもらえるお金の本』(角川SSC新書)、『現役女子のおカネ計画』(時事通信社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(日経BP)『親の終活、夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)など著書多数(ホームページ​経済エッセイスト井戸美枝FBページ)。

 

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