「海賊と呼ばれた男」も愛した、迫力の名画 モローとルオー、時空を超えた師弟関係

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ギュスターヴ・モロー 『一角獣』
ギュスターヴ・モロー美術館
©RMN-GP/Christian Jean/distributed by AMF
想像上の動物である一角獣は獰猛だが乙女には従順。現在、大阪の国立国際美術館で公開中のクリュニー美術館のタピスリー『貴婦人と一角獣』に刺激を受けて描かれたという

色彩を解放せよ

慕っていた師を失い、ルオーは深く落ち込んだ。

「数年のスランプをかいくぐった後、ルオーの様式は激変します。モローの死後にこそ、ルオーの中にモローの影響が色濃く出てきた。色彩とマティエールという点で2人はよく似ています」

展示室には、一見どちらの絵かわからない作品もある。“2人の交流”はモローの死後も続いていたと後藤教授は語る。ルオーはマティエール、絵具の質感を特に重視した。

「絵具を塗って、削って、また塗るというように、何層もの絵具の層が表面に出ている。それが光に反射して、宝石にも例えられるような独特の色彩、マティエールを出しています。モローの資質を受け継ぎながら、独自のものとして変容させた。モロー先生見てください!と言っているようです」

モローは生前、「色彩を解放せよ」と言い続けた。それはどういうことなのか、モローの死後、ルオーはずっと考え続けた。「そして到達したのが、この重厚なマティエールでした。モローの教えに一生をかけて応えたのです」。

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