色彩を解放せよ
慕っていた師を失い、ルオーは深く落ち込んだ。
「数年のスランプをかいくぐった後、ルオーの様式は激変します。モローの死後にこそ、ルオーの中にモローの影響が色濃く出てきた。色彩とマティエールという点で2人はよく似ています」
展示室には、一見どちらの絵かわからない作品もある。“2人の交流”はモローの死後も続いていたと後藤教授は語る。ルオーはマティエール、絵具の質感を特に重視した。
「絵具を塗って、削って、また塗るというように、何層もの絵具の層が表面に出ている。それが光に反射して、宝石にも例えられるような独特の色彩、マティエールを出しています。モローの資質を受け継ぎながら、独自のものとして変容させた。モロー先生見てください!と言っているようです」
モローは生前、「色彩を解放せよ」と言い続けた。それはどういうことなのか、モローの死後、ルオーはずっと考え続けた。「そして到達したのが、この重厚なマティエールでした。モローの教えに一生をかけて応えたのです」。
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