肉声が明らかに…宮崎勤元死刑囚「本当の姿」 私たちはだまされていたのか?
「埼玉の犯人に仕立て上げることで頭がいっぱいだった」
「犯人を女性に見せかけたかった」
宮崎勤元死刑囚は埼玉県・所沢市に住む「今田勇子」という名前で殺害した少女の骨と告白文、犯行声明文をメディアや遺族に対し送った。上の2つの“音声”はその理由について聞かれた際に答えた内容だ。
“異常者”?のはずが…「偽装工作」
実は彼は捜査を攪乱しようと偽装工作をしていた。彼は東京の奥多摩地方に住んでいた。そこで犯人をあたかも埼玉に住んでいるようにカムフラージュしようとした。さらに女性を犯人だと思わせることで捜査の手が自分に及ばないようにと“工作”までしていた。
誘拐する際や遺体を車に乗せて遺棄する際にはカメラや記録などでアシがつきそうな高速道路は使わず、あえて一般道を利用するなど、自分の犯行が明るみに出ないように“工夫”もしていたのだ。
宮崎勤元死刑囚といえば「異常者」のようなイメージを持つ人も多いかもしれないが、その肉声から浮かび上がってきたのは私たちが知らなかった“意外にもまともで冷静、かつ狡猾な“宮崎勤元死刑囚の姿だった。彼の自宅があった奥多摩から夜中、車を走らせて山道をひたすら実際に走り埼玉県の遺体遺棄現場に向かってみたが、彼はいったいこの寂しい道をどんな思いで走っていたのだろうか。
その後、宮崎元死刑囚は裁判で取り調べの際とは異なった姿を見せる。ひたすら絵や記号を書き続けたり、ネズミ人間が現れたと言ったり、遺体の一部を食べたと言ったり、遺体をビデオで撮影したのは死んだおじいさんに捧げるためだと発言したりするなど裁判では意味不明な言動を繰り返した。
このため2度にわたる長期の精神鑑定が行われその責任能力が問われたが、最終的には「人格障害」として責任能力を裁判所は全面的に認め、死刑を言い渡した。そして、2006年2月、最高裁は訂正判決申し立てを破棄。死刑が確定、2008年に刑が執行された。
こうしたことから宮崎元死刑囚は「遠い存在」「私たちとは程遠い人物」「サイコパス」ではないか、とすら思われている節がある。しかし今回明らかになった取り調べの音声には捜査員と談笑し、反省の弁を述べ、自らの罪を認めた。“普通の男”、誤解を恐れずに言えばよくニュースで見る“普通の犯罪者”がいるのである。
取材班は初めて宮崎元死刑囚の肉声を聴いた時、「これまで宮崎元死刑囚は私たちをあざむいていたのではないか?」。キツネにつままれるような思いがした。
この事件の後、精神鑑定は当たり前のものとなり、裁判になると奇矯な発言を繰り返したり、異常ともとれる行動をとる被告人が時折みられるようになったりした。それは拘禁症状によるものでも一部はあるのかもしれない。
一方、ある弁護士は取材に対し「『責任能力なし』という肩書を得ようとして無罪を勝ち取ろうとしているものもある」と語る。その後の犯罪、裁判にも影響を与えたこの事件。彼は異常者だったのか? サイコパスだったのか? それとも異常者を装っていたのか? 今回公開されるその肉声はその疑問に答える1つの答えになるかもしれない。
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