海外でも論争、「優先席問題」は解決できるか ジャカルタでは乗務員が巡回して注意促す

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実際に手にできるかどうか、筆者も入手をめざしたところ、特に理由を聞かれることなく2週間ほどで現物が送られてきた。日本でも使われている「おなかに赤ちゃんがいます」と同様の意味を示す「Baby on Board」と示されたバッチは広く使われているが、残念ながら「席を譲ってくださいバッチ」を付けている人を見たことがない。

ロンドン交通局が配布している「席を譲ってください」バッチ。日本で同様のものを配ったらどんなことが起こるのだろう?(筆者撮影)

バッチには「席を譲ってくださいカード」も同封されており、これは優先席に構わず座っている人に「どいてください!」と言わんばかりに見せつけるような用途を想像するのだが、はたしてそんなことができる乗客はいるのだろうか?

ある種の強制力により優先席を機能させるジャカルタの例は極端とはいえ、日本で(残念ながら)日常的に起こっている「本来、優先席に座るべきあろう人がいるのに、若者がそこを占有している状況」はあまり芳しいとは思えないがどうだろうか?

訪日客たちは「東京での優先席利用状況」をみてどう感じているのか。外の人からの視点は参考になる。

訪日中に「キャリーバッグを運んでいたら、正面から僕の方にまっすぐ人が向かってきた」という経験を話してくれたスミスさんに、「電車で何か印象的なことはなかったか?」と聞いてみた。

するとスミスさんは、「老人に誰も席を譲らないので、僕が席を立とうとしたら、しきりにNoという仕草をするので逆に困った。ロンドンでは誰でも一言Thank youと言って座るのに……」と話してくれた。

日本人の「心」が理由なのか

席を譲る、譲らないの問題は、多くの日本人が持つ「誰かに迷惑をかけてはいけない」という心が起因するのかもしれない。たとえば若者が老人に席を譲るべく声をかけようにも、「私はまだ席を譲ってもらうほど歳をとってはいない、と怒られてしまうかも」と忖度(そんたく)したりとか、お年寄りの側は「若い人は仕事で疲れているのだから座らせてあげよう。私はすぐ降りるのだから」と考えるのか、席を譲りましょうと声をかけてもひたすら遠慮されることが多いようだ。さらに座っている側の心理として「周りの誰も譲ろうとしないのだから、自分があえて席を譲るのも……(その場の平穏をあえて崩すこともない?)」と考えているかもしれない。

なかなか結論を出すことができない「優先席のあり方」。日本人が持つある種の「気遣い」により、席を他人に譲ったり譲られたりするのはなかなか勇気がいることなのだろうか。とはいえ、仮にも日本で「おもてなし」の対象としている外国人訪日客に「日本人は席を譲らない」と思われてしまうのは嘆かわしい。日本特有ともいえる極めて厳しい満員電車の通勤事情を考えると簡単に結論を導けないのがもどかしい。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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