海外でも論争、「優先席問題」は解決できるか ジャカルタでは乗務員が巡回して注意促す
一方、アジアの中でも比較的地下鉄や近郊電車網が発達している香港ではどうだろうか? 写真のように「優先座」と呼ばれ、地下鉄では1車両当たり2席から4席に増設する措置が進んでいる。
現地の調査機関が学生1800人あまりを対象にアンケートを行ったところ「空いている優先席に座った時に心理的圧力を感じる」との回答は8割以上に上ったという。しかも、香港では老人が「優先席に座らせろ」と若者に主張するケースが極めて多く、今では、「世代間論争の種」という問題にまでエスカレート。批判の対象になっていることを揶揄し、「優先席でなく論争席だ」と論じる人々さえもいる。
しかも香港ではさらに陰湿なことが行われている。優先席に座っている学生などをスマホで撮影し、それをネットにさらし糾弾することもあるという。そんな中、男子学生の30%が「優先席の設置そのものをやめて欲しい」と訴えているとの結果も出ている。
ジャカルタでは強制的に立たされる
「ネットで公開批判」が行われる香港の地下鉄では、混んでいる車内で優先席が空いていても誰も座らない事態が往々に起こっているという。もっとも、事情を知らない外からの観光客が座っている様子も見かけるが。
一方、係員がやって来て「座るべき優先度の高い乗客が来たら、他の乗客を立たせる」という極端な「運用」を行っているところがある。それは1000両近い日本製中古車両が走るジャカルタの近郊鉄道網(旧KCJ、9月からKCIと改名)だ。
電車や駅構内の秩序を守る「PKD」と書かれたヘルメットをかぶった男性スタッフが、随時車内を巡回。「あなたより困っている人がいます」と乗客の膝を叩き、席を変わるように促す。日本で走っていたときには車両片端だけに設けられていた優先席エリアがジャカルタで両端に設けられており、日本の習慣で車両の端の座席に優先席とは知らずに座っていた筆者は膝をPKDに叩かれ、赤ちゃんを抱いたママに席を譲ることになった。もっとも最近では、「自分より座るべき優先度の高い人」が乗ってくると自主的に立つ傾向もみられ、「PKDによる膝叩き」がなくても快く席を譲る男性客が増えているのは喜ばしいことだ。
一方、ロンドンでは今年から、身体に何らかのハンディを持つ人向けに「席を譲ってください」バッチを交通局が配布している。
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