中国ネット出前ブームで「事故急増」の教訓 「安全よりスピード」には弊害がある
配達が遅れたり、利用者からの評価が悪いとドライバーが罰金を取られるだけでなく、会社側が事故の保険や補償を提供していないことさえある、と配達員は指摘。一方、会社側は、ドライバーは公的または第3者の損害賠償保険に加入していると説明する。
ロイターが取材した複数の配達員は、10─12時間のシフト1回につき、最大40件の配達を任されていると語る。配達1件の所要時間は30分以下に設定されており、時間内に配達し、利用者から高評価を得ると、1件につき5元(約84円)が給料に加算される。
配達員は通常、オンライン出前サービスのプラットフォーム運営会社に直接雇われるのではなく、フリーランスだったり、別会社に雇用されているため、運営会社と直接コンタクトを持つことはない。
江蘇省宜興では8月、美団外売の配達員数十人が、賃金と負傷した場合の補償について抗議するストライキを行った。傷だらけの足を見せ、遅配の罰金が給料からどれほどたくさん差し引かれているかを示す手書きのメモを掲げて抗議した。
配達員の大半が農村から出稼ぎにきた若者
美団外売による昨年の報告書によれば、配達員の大半が農村から出稼ぎにきた26歳以下の若者で、収入のほとんどを家族に仕送りしている。
「フードデリバリー各社は、もっと人間的な経営をすべきだ」と、共和党機関紙の人民日報は最近の論評で批判した。「スピードだけを追求する営業モデルを改め、安定を追求すべきだ。食事の配達のために、配達員の生命を危険にさらしてはならない」
Ele.meの広報担当者は、「配達スピードと交通安全のバランスを取ることは、実際非常に難しい」と認めたうえで、配達ルートを最適化し、ドライバーの動きを把握するため、AI(人工知能)を導入する方向だと話した。
他の荷物配達業に比べて、食品の出前サービス会社は、ドライバーにかかる時間のプレッシャーがより大きく、配達ルートも一定ではないため、これまで多くの批判を浴びてきた。
だが、より広範なデリバリー業界も問題を抱えている。
北京の荷物配達のドライバーで、河北省出身のNiu Hongqiangさん(23)は、彼が受けた安全訓練は「役に立たない」と話す。「何かトラブルが起きるときは、大きなトラブルになる」
(Christian Shepherd記者 翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
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