疲弊する日系LCC、「運賃競争」を抜け出せるか 国内初就航から5年、各社は顧客囲い込み急ぐ

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中国・春秋航空傘下の春秋航空日本も就航から3年が経過したが、40億円前後の赤字から抜け出せない。会社側は「事業計画が遅れているのは事実」とする。今後は中国を中心に国際線を拡大させるというが、収益への貢献度は未知数だ。

成田空港を離陸する春秋航空日本の航空機(撮影:尾形文繁)

こうした状況を受け、ジェットスターは競合が少ない成田発着の国内線に比重を置く。同社は9月14日に成田─宮崎線の開設を発表した。

ただし、成田は周辺住民との取り決めで23時以降の離着陸ができない。稼働率を高めて利益を出すLCCにとってこの制限は厳しい。そのため、同社は来春には中部国際空港も拠点化し路線を増やす方針だ。

24時間空港である関空のメリットを享受してきたピーチも変革を迫られている。設立以来、増収増益で営業利益率は12%と断トツ。そんな同社も「アジア勢の投げ売りに影響を受けている」(井上慎一CEO)。今4〜6月期はわずかながら減益となった。

客の囲い込みで安売り回避へ

単価下落に歯止めをかけるべく、井上氏は「ファンづくり」を強調する。個性的な機内食を出し自動車まで機内販売した同社だが、ビットコインによる航空券の購入など「ピーチに乗る価値をさらに高めていく」(井上氏)考えだ。

他社も顧客囲い込みを急ぐ。バニラは8月、購入金額に応じてポイントが貯まる会員制度を導入。ピーチやジェットスターも、割引や早期購入が可能な有料会員制度を展開する。

固定客をつかめば無理な安売りを避けられる。「次の5年」はサービス面の差別化がカギになりそうだ。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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