外食産業の店長はなぜこんなにも働いているのでしょうか。そこには大きく2つの要因があります。1つは日本の外食企業が抱える構造問題、もう1つは店長自身の心持ちです。
デフレ時代に確立された店舗のローコストオペレーションによって、正社員に比べて相対的に賃金の安いパート・アルバイトに大きく依存せざるをえない外食企業は少なくありません。東洋経済オンラインが今年3月23日に配信した『「非正社員への依存度が大きい」トップ500社』を見てみると、パート・アルバイトなどの非正社員が占める割合は労働者全体の約37.5%。対して、外食大手の非正社員比率は7~9割台も珍しくありません。
ただ、アルバイトに長時間労働の実態はありません。ツナグ働き方研究所が2016年11月にオフィスワークではない労働環境でのフリーター/パートアルバイト就業者200人を対象に実施した「アルバイト労働時間調査」によれば、アルバイトの労働時間は月91.3時間。理想の労働時間が98.3時間で、それよりやや少ないというスコアです。
背景の1つには、近年、メディアで取り上げられるようになった「ブラックバイト」問題があります。某牛丼チェーンで取りざたされた深夜のワンオペ(アルバイトスタッフが深夜時間帯にひとりで店を切り盛りする体制)のほか、残業代の未払い、過剰なノルマやペナルティの押し付けなどが表面化。糾弾された企業はもちろん、その潜在リスクに怯える外食業界全体が、パート・アルバイトの職場環境改善に力を入れざるをえなくなりました。
「シフト1回での勤務は、8時間を超えてはいけないと決められています。こっちがもっと働きたくても、そのルールは絶対なんです」。大手ファストフードチェーンで働く学生バイトが教えてくれました。彼が働くのはかつて残業代未払いが問題になった企業です。
労働時間もコストもしわ寄せは店長に来ている
労働環境を改善する以外に、外食企業の多くがパート・アルバイトの労働時間を大きく増やせないもう1つの側面があります。
「社長からは『もっと利益を意識してほしい』と要望されています。結局スタッフの稼働を抑えて、自分が働くことでシフトを埋めることもあります」。Aさんは打ち明けます。労働コストを極限まで切り詰めなければならないという企業側の事情です。労働時間もコストもしわ寄せは店長に来ています。
バイトの代わりに店長が働くことで、余分な人件費が発生しないようになっている外食企業は少なくありません。これは10年以上前から「名ばかり管理職」として問題になっていますが、店長に管理職として定額の「みなし残業手当」を付けることで、超過分の残業代を支払わないという慣行がまかり通っているのです。
これは「定額働かせホーダイ」といってもいいでしょう。たとえば、ボーナス(賞与、一時金)を除けば、週6で働いているアルバイトスタッフのほうが店長よりも月給が多い、という逆転現象も起きているそうです。
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