食品値上げは好機? ヨーカ堂が安売り業態に参入
セブン&アイグループのイトーヨーカ堂は安売り業態に参入する。8月29日に都内の西新井店を業態転換し、ディスカウント店「ザ・プライス」を開店した。
ザ・プライスの目玉は、商品の8割を占める食料品。PB商品は扱わず、メーカー商品のみで勝負する。ヨーカ堂と別ルートで仕入れることで、1~3割ほど価格を抑える。その代わりアイテム数は1万6000点と半数に絞り、大量陳列で販売する。
生鮮食品も独自の仕入れルートを開拓する。野菜は契約農家から直送し、魚介類は卸売市場で直接買い付けて原価を低減。さらに正社員を半減させてパート社員を活用するなど、安売りに耐えるローコスト店舗を確立する。
実は、同社が安売り業態に乗り出すのは初めてではない。1990年代にも同じ店名でディスカウント店を展開した歴史がある。ただし当時は生鮮食品でなく、家電やブランド品を扱っていた。結局は4店舗にとどまり、2003年に撤退した経験を持つ。
ヨーカ堂の鈴木敏文会長も「高コスト体質の日本でディスカウント業態は根付かない」と持論を展開。子会社で安売り業態のダイクマも02年にヤマダ電機へ売却した。
一度は見切ったはずの安売りへ再参入--。大手食品メーカーも「安売りから一番縁遠い量販店なのに」と驚く。
食料品に狙いを絞る
背景には、消費者の購買行動の変化が影響している。昨年から続く食品の値上げで、節約志向は強まるばかり。ヨーカ堂も「生活応援価格」で価格据え置きを実施したが、対象になるのは一部商品のみ。そこで浮上したのが、安売り店への再参入だった。通常のディスカウント店は家電など耐久消費財が中心だが、ザ・プライスはあえて食料品に狙いを定めて差別化を図る戦略だ。
しかし、あるディスカウントストア幹部は「異業種も含め、多くの会社が低価格戦略に比重を移している。その中で独自性を打ち出せるかどうか疑問」と話す。さらに低原価の仕入れルートや物流など、独自のノウハウ確立も今後の課題となる。
ヨーカ堂は西新井店の成果を見極め、ザ・プライスを新規出店で育成する方針。しかし、安売り再参入のハードルは決して低くなさそうだ。
(田邉佳介 =週刊東洋経済)
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