金利は管理相場下でのボックス圏の動き 市場動向を読む(債券・金利)

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今後、数カ月といったスパンで、日本の金融緩和の時間軸にカタリストとして何らかの変化をもたらす可能性があるのは、株価の大幅上昇シナリオしかないだろう。この点について言えば、筆者は、短期的にはQE3の減額決定後にグローバル株価がいったん切り返す可能性もありだとは見ている。

金利を上昇させるようなバブルストーリーは描けず

米国経済も夏場にやや強弱の指標が織り交ざったとはいえ、まだすぐにも減速に向かうということにはなりそうにない。むしろ過去数カ月間、QE3減額を織り込んでくる過程での新興国からの資金還流、長期債売却によって、米国を中心に投資家のキャッシュ水準はかなり高くなっている状況と見られ、潜在的には株式などのリスク資産押し上げ要因がある。加えて日本株の場合、オリンピック開催決定や消費増税決定後の外国人買い再開、といった期待もある。

しかし、仮にそれが5~10%程度の株価上昇であるとすれば、日銀の金融緩和時間軸の短縮化をもたらすほどの決定的なカタリストにはならないだろう。決定的なカタリストたりうるには、「壮大なバブルストーリー」といったものが必要であろう。

10~12月にかけて、グローバル環境、株価といったファクターは必ずしも一方的に日本国債の金利低下を後押しはしないとみるが、かといって、金融政策効果を減衰させて金利レンジを上昇シフトさせるまでには至らないはずである。日本国債は7、8月に形成されてきたレンジを基本的には継続する形でのボックス圏相場がしばらく続くことになるのではないか。それは、金融政策による一種の管理相場である。

管理相場のレンジ内で日本国債の金利が明確に低下方向に向かうシナリオも十分にありうるのだが、それには、米国金利を中心としてグローバルな長期金利がピークアウトから低下に向かう必要があるだろう。その展開は、米国経済が循環的にピークアウトしてくるタイミングにおいて実現してくるものと予想される。2014年に入ってくると、そういった展開のほうにやや軸足を置いてみていく必要があるのではないか。

森田 長太郎 オールニッポン・アセットマネジメント執行役員/チーフストラテジスト、ウォールズ&ブリッジ代表

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もりた ちょうたろう / Chotaro Morita

慶応義塾大学経済学部卒業。日興リサーチセンター、日興ソロモン・スミス・バーニー証券、ドイツ証券、バークレイズ証券、SMBC日興証券などで30年以上にわたりマクロ経済、金融・財政政策、債券需給などを分析し、2023年10月から現職。グローバル経済、財政政策、金融政策の分析などマクロ的アプローチを行うことに特色がある。機関投資家から高い評価を得ている。著書に『日本のソブリンリスク 国債デフォルトリスクと投資戦略』(東洋経済新報社・共著、2011年)、『国債リスク 金利が上昇するとき』(東洋経済新報社、2014年)。

 

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